公立能登総合病院 田中さん

特定行為研修修了者 田中さん 【お名前】 田中 美春さん(主任看護師、特定行為看護師)
【病院名】 公立能登総合病院

【特定行為区分】1区分…創傷管理関連

【特定行為】2行為…褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去、創傷に対する陰圧閉鎖療法
※取材日…2020年2月
 

特定行為研修を受講したきっかけ

形成外科の外来に勤務していた時に、先生の診療補助や局所麻酔の間接介助をしていました。その時に外来通院されている患者さんで通院が困難な方は、ストレッチャーを使用し、いろいろな人の手を借りて、1~2時間かけて病院に来られていました。そして診察室に入ると、先生がものの15分くらいで処置をし、その何倍もの時間をかけて帰る患者さんを見てきた中で、こんなに労力を使って通院するのは大変だと思っていました。

その後形成外科の担当を離れてから数年経ち、平成29年に入った時に、特定行為研修を学べば、先生の代わりに在宅で処置を施して、患者さんの通院の手間も省けると知りました。そこで、自分が研修を受ければその役割を果たせると思い、受講を希望しました。その時は産婦人科と小児科の病棟にいたのですが、快くOKをいただきました。

どんな研修だったか・研修を受講した感想

フィジカルアセスメントや臨床推論など、受講した区分以外のことでも活用できる考え方を学ぶことができました。自分が一人で在宅看護に行き、患者さんの病態を見て判断する、その能力をスキルアップするにはすごく良い研修だったと思います。
そして創傷管理関連の区分は、区分別科目の時間数が72時間と一番長く、実習も多いです。実習の中で、先生の褥瘡回診の時に付いて、患者さんの承諾を得て、実際に外科的処置をしました。その時に先生からは、「この傷には処置をした後どの薬を使うのがいい?」というようなことを質問され、自分が判断したことや考えを答えました。
もちろんそういった外科的治療だけではなく、褥瘡をつくらないためにどうしたらいいか、栄養管理やポジショニングなどの生活全般を含めて、予防方法を考えることが重要です。

業務の中でどういう特定行為を行ったか

研修が終了してからの1年は病棟と外来で勤務をし、その後に在宅部門に異動しました。異動してみて病院と在宅の違いを改めて認識し、先生がいないところで治療をして役割を果たさなければ、ということを実感しました。なにぶん当院の特定行為1期生なので、最初はどういう流れで特定行為を行うのか、システムが整っていませんでした。そこで、バックアップしてくれる先生と一緒に、記録物や報告の流れを決めるなど、システム作りを行いました。

病院ですと物品や治療材料が揃っていますし、経済的にも医療費で賄えますが、在宅で治療となると経済力にも関係しますし、物資もなかなか揃えられないという問題があります。私たちも毎日訪問看護に行けるわけではないので、老老介護だと家族の介護力の問題もあります。例えば利用者さんに重度の褥瘡がある場合には、毎日の処置も必要になりますが、日々の対応をご家族や介護をする方がしなければいけません。その指導を私たちがするのですが、なかなかご家族が対応できない場合もあります。そういった環境の中で治療への最大限の支援をすることが、看護師だからできるトータルケアなのではないかと考えます。利用者さんは、お医者さんに「治してもらう」という感じだと思いますが、在宅に来る特定行為看護師だと「一緒に治す」というような違いがあるのかなと、日々業務を通じて思います。

褥瘡の予防はスキンケアなどの対策ができており、スタッフは予防に焦点を当ててケアしています。あまり重篤な事象が発生していないのですが、例え褥瘡が発生した時もしっかり治癒しています。そういう実績もあるので先生も看護師に任せてくれ、段々と信頼されているのかなという実感があります。

これからの課題

病棟や外来の担当ですと、先生と密に関わることができるので、先生に関わっている外部の医療材料の業者さんとも接点があり、最新の被覆材や新商品の情報が入ってきます。そのように、病棟勤務の時は最新の情報を知る機会があり、知識もあったのですが、異動して一年、在宅での看護をしていると、新しい治療方法や技術、機械の情報がなかなか入ってきません。そのため、褥瘡学会など勉強の場に行った時に情報を得るようにしています。やはり自分にある程度知識がないと、患者さんにも治療法の説明ができませんし、治療に対するケアの幅が広がりません。自分に知識があれば、患者さんや介護者に治療を支援するための選択肢を提案できます。そのために、自分で情報をしっかり集められるように、努力していかないといけないなと思います。

今後、学んだことをどのように活かしていきたいか

治療を受ける側から言うと、「治してもらっている」ということではなく「一緒に治している」という満足感が得られるような看護が提供できたらと思います。在宅看護だと、私たち看護師だけではなく、患者さんの家族も傷を洗ったりと看護に介入しているので、プラスアルファの満足感を得られるような治療に関わっていけたらいいなと思います。そして、特定行為という処置だけにとらわれるのではなく、トータルケアができる看護師でずっといたいです。
その他、特定行為についてまだまだ知らない人がいっぱいいると思いますので、周知をしていきたいです。

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