悪心・嘔吐 vol.1 悪心・嘔吐とは

悪心、嘔吐とはどんなものなのでしょうか?以下に解説します。

悪心・嘔吐の定義

悪心、嘔吐は、以下の3つに定義づけられます。

悪心(嘔気)

嘔吐をせずにはいられなくなるような不快な感覚のこと。皮膚の蒼白、冷汗、唾液の分泌、頻脈、下痢といった自律神経症状を伴う。さらに、窮迫する胃腸感覚になると、次のような症状に発展します。

むかつき

嘔吐に導くような、横隔膜と腹壁筋の痙攣性の動きのこと。

嘔吐

胃内容物を強制的に口から吐き出す現象のこと。

 

吐き気と嘔吐は、進行がん患者さんの40~70%に現れる症状だといわれています。他にも便秘や腹水、腸閉塞など、進行がん患者さんを悩ませる消化器症状はとても多く、症状は、女性、65歳以下の患者さん、乳がんや胃がんの患者さんでよく見られるとも言われています。嘔気と嘔吐に共通して関連する条件は、逆流、嘔吐を催す、そして「繰り返す」ということです。

原因

まず、病態、原因を理解しましょう。悪心・嘔吐の原因には、以下の3種類が考えられます。

  • (1)病態に関連したもの
  • (2)治療に関連したもの
  • (3)精神的なもの

 

■嘔気・嘔吐の原因

嘔気・嘔吐の原因

■種類別の原因と病態生理

原因 病態生理 症状
(1)病態に関するもの
消化管の通過障害 ※1
消化器の異常
気管・気管支の刺激・咽頭刺激
中枢神経障害 ※2
前庭器官への影響 ※3
電解質異常 ※4
・迷走神経、大内臓神経→孤束核→嘔吐中枢を刺激
・脳内のヒスタミン受容体を介して嘔吐中枢を刺激
・前庭神経→小脳→嘔吐中枢を刺激 ・CTZ→嘔吐中枢を刺激
・血液を介して刺激を嘔吐中枢に伝達
心窩部痛、胃部膨満
食後に増悪
過剰な咳嗽に続いて起こる
頭痛、嘔気のない嘔吐
動くと悪化する、めまいを伴う
持続的な嘔気・嘔吐
(2)治療によるもの
薬物療法
放射線療法
オピオイド、抗けいれん薬、ステロイド、抗菌薬、抗不整脈薬
胃粘膜の局所刺激
・血液を介して
・前庭器官
・胃の運動性が低下→胃内容物の停滞→求性神経→CTZを刺激→嘔吐中枢を刺激
持続的な嘔気・嘔吐
薬剤の血中濃度に合わせて増悪
(3)精神的・心理的な刺激によるもの
視覚、味覚、嗅覚などからの刺激
強い不安や感情の高まり
以前に経験した嘔気・嘔吐の記憶
大脳皮質→嘔吐中枢神経を刺激 変動がある嘔気、嘔吐を伴うことがある
誘因がある

※1 消化管の通過障害:消化管の内容物の停滞、肝転移による肝被膜の過進展、腹水、腹膜播種
※2 中枢神経障害:脳や髄膜の腫瘍、頭蓋内圧の亢進
※3 前庭器官への影響:小脳腫瘍迷路の炎症
※4 電解質異常:高カルシウム血症、肝不全、尿毒症など

通過障害

通過障害は、以下のようなことをいいます。

通過障害

発生のメカニズム

嘔吐中枢は、脳幹に位置しており、嘔吐反射と互いに統合的に作用しています。

嘔吐中枢

検査方法

悪心・嘔吐の検査としては、以下の項目が上げられます。これらの項目から、症状の原因を探っていきます。

 

  • 身体診察
  • 投与中の薬物の確認
  • 検査・画像検査の確認(通過障害、肝腫大、脳転移、がん性腹膜炎の有無を確認)
  • 血液データ(代謝異常、電解質異常の有無を確認)

 

がん患者さんの特徴

がん患者さんの特徴には次のようなものがあります。

 

  • 推測される原因が複数あること
  • あらゆる検査をしても原因が不明なこと
  • 病態の改善よりも症状緩和を優先させること

 

 

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