訪問看護リハビリステーションOHANA

寺口 尚人さん 【お名前】 寺口 尚人さん
【施設名】 訪問看護リハビリステーションOHANA
【ご紹介】 施設長・看護師。学校卒業後、民間・大学・公立病院や訪問看護ステーション等で勤務。その後、訪問看護リハビリステーションOHANAを立ち上げる。※取材日…2018年11月
 

看護師を目指したきっかけ

祖父が病気で入院していた時、術後のせん妄で暴れていたので、家族が付き添うことになりました。家族が声を掛けてもなかなか落ち着かなかったのですが、その時に看護師が来て、祖父に声を掛けると落ち着きました。その時に、自分の大切な人くらいは自分で見たいと思うようになりました。私は祖父を二人とも亡くしているのですが、一人目の時には、何も出来なくて側にいることすら心苦しかったのを覚えています。

最初は会社員として働いていたのですが、それからある病院で人が足りないということで、看護助手として働き始めました。その病院で仲良くなった男性看護師がいて、「看護師になったら?」と勧められたのが大きなきっかけでした。その後学校に行って、准看護師、看護師の資格を取りました。准看護学校の時の担任の先生が、「自分のことも出来ない人が、人の世話をできるか」とよく言っていて、その言葉を今でもすごく覚えています。その時は自分のことと患者の看護は別だと思っていましたが、実際に働き経験を積んだ今は、その言葉がすごく大事だと思うようになりました。

看護の資格を取った後、いくつかの病院で勤務しました。その後、ステーションを立ち上げる前に一年弱ほど、別のステーションで経験をさせていただきました。今は訪問看護ステーションを始めて、もうすぐ二年弱です。

実際に看護師になってみて

看護師は、資格を取ったからOKというものではありません。資格を取った上で、経験を積まなければならないし、完成がないことが大変だと思います。
看護師になりよかったことは多くありますが、その一つは病気に詳しくなったことだと思います。最近はネットの情報を見て、知識を持っている患者さんもいますが、情報を正しく理解できないことや正しい情報の見分けができないことが多々あります。そのために正しい治療を拒否される方もいらっしゃいます。そういうことを正しく理解できるようになったことはよかったと思います。

また、在宅の分野に来てみて、患者さんが家に戻る方法やいろんなサービスがあることを知りました。病院で勤務していた時も、在宅の研修は受けるのですが、机上だけでは理解できていないことが多かったです。もし自分が今の知識をもって病院で働けたら、在宅へ戻りたい患者さんにもっといろんなサービスを使って退院支援できたのにと、本当によく思います。
私の経営しているステーションの特徴として、ステーション名の「OHANA(オハナ)」はハワイの言葉で「家族」と言う意味があります。血縁関係のない仲の良い近隣の人達を家族と呼ぶという意味合いがあるので、利用者さんとその家族も皆、自分たちの家族のように関わっていけたらという思いがあります。
日頃気を付けていることは、患者さんに対する対応です。患者さんは自分より目上の方が多いです。患者さんは病気に関しては素人で、病気について知らないから教えていると、ついつい言葉が乱暴になっていく方もいます。そういう風にならないように気を付けています。

看護師としてのやりがい

サービスが整っていない、家で見てくれる人がいない等の理由で、患者さんが家に帰りたくても帰れないという問題があります。訪問看護を始めようと思ったのは、そういう患者さんのサポートをしたいと思ったことがきっかけです。患者さんが少しでも自宅で過ごせるような環境を作って、「家に帰ってこれてよかった」と言ってもらえることが、やっていてよかったと実感します。
患者さんの家族によって違いますが、「最後は本人が望むところで過ごさせてあげたい」という方が割と多いです。患者さんが家に戻ると家族の負担がどうしても大きいので、家族も覚悟を決めて家に戻ることを受け入れます。私たち看護師が訪問することによって、一緒に住んでいる家族や、患者さんと離れて遠方に住んでいる家族の不安や負担を軽減出来たらいいと思います。そんな面でも在宅看護はすごくやりがいがあると思います。

元々、看護学生の時から訪問看護をしたいと考えていました。学生として病院の実習へ行くと、看護師さんは忙しいけれど、学生はゆっくり話してもらえる、と患者さんから聞いていました。訪問看護では、決まった時間内はその患者さんの側にいることができるため、その間はゆっくり話ができるのでいいと思いました。

病院で働いていた時は糖尿病を長く担当していたのですが、自分たちの一言一言が、その患者さんの人生に大きな影響を与えることを感じました。例えば患者さんが糖尿病の教育入院された時の関わり方によって、患者さんの気持ちが楽になったり、病気と向き合えるようになったりすることがありました。その時の患者さんの気持ちに応じた言葉を掛けることが大切だと思いました。医療者側の思いをどう伝えるのか、厳しく伝えることが必要であったり、それよりもそこは言い方を変えて伝えた方がよかったりと、その人に応じた個別の指導が経験を積むことでできるようになっていきます。

看護師を目指す学生へのエール

男性だからこその苦労は常日頃あるのではないでしょうか(笑)。学生の時から大変だと思います。私の場合は、准看護師の学校では学年で男が一人でした。正看の時は男五人でした。実は私自身はそんなに大変だったことはないのですが、他の人を見てたら大変そうだなと思った事はあります。女性が多い中で上手く生きられるかが関係すると思います。

今までに勤務させていただいた病院では、精神科、小児科、内科、神経内科、血液内科など、様々な科の経験をさせていただきました。訪問看護は色々な疾患の患者さんがいるので、何でもできないとだめなイメージがありました。今は専門性を高める傾向がありますが、在宅では沢山の疾患を経験をしておいた方がいいと思います。

看護学校に入ってから看護観が常に問われます。もちろん看護観は変わっていくと思うので、常に自分の看護観というものを考えてやっていけるといいと思います。なかなか答えはないですが、いろんな看護観がいろんな患者さんの役に立つと思います。

学生の方がどういうきっかけで看護師になりたいと思うかは分かりませんが、すごくやりがいがある仕事だと思います。看護師は人の生死を見ていく仕事で、そこに立ち会う深い経験が出来ます。仕事が大変だと思っても、やりがいの方がそれを超えるのではないかなと思います。

現役男性看護師へのエール

「男だから」と言われ、何でも役割を振られることがあります。その場合はみんながやりたくないことだったりしますが、私は半分あきらめていて、言われたことを素直に受け入れて熟した方が仕事はやりやすくなると思いやっていました。男性だからできる仕事や役割があります。そういう役割を積極的にしていくことで周囲から頼られると思います。例えば、女性の看護師が行くと嫌がられる患者さんでも、男性の私が行ったら受け入れがいいことがあります。もちろん反対に、私が行ったら全く話さない男性の患者さんが、女性の看護師が行ったら笑って話す人もいましたが。そういう男性だからできる役割をしていくことが大事になります。
管理者として訪問看護をやっていますが、「女性の看護師さんはいますか?」ということを聞かれることがあります。トイレや入浴の介助で患者さんが恥ずかしがって女性の看護師を希望されることもあるので、女性の方が需要は高いように感じます。しかし、「男性の看護師がいてよかった」といわれることもあるので、男性看護師の役割は沢山あると思います。
その他、看護師の間でも「男性看護師がいると空気が変わる」「厳しい看護師が優しくなる」ということはよく言われました。

看護師は、看護学生の時は勉強や実習に追われ、看護師になってからも仕事や研修で、同年代の大学生や社会人と比較すると遊ぶ暇が少ないと思います。しかし、そんな風に過ごしていると、意外に常識的なことを知らないということがあります。しかし、いろいろな患者さんと関わる上でも、プライベートも充実させて行った方がいいのではないかなと思います。私はプライベート充実派なので、海ではジェットスキーをしたり、ボランティアでライフセーバーをしたりしていました。実際に一次救命の処置をしたことが何度かありました。患者さんやそのご家族とは病気の話だけではなくて、プライベートな話をすることも多いです。
患者さんと看護師の相性もあるし、患者さんは本当にいろんな方がいるので、看護師もいろんな人がいていいと思います。こんな人じゃないとだめっていう決まりはないと思います。看護の勉強をして、その人がちゃんと看護師であれば、いろんな性格の人がいていいのだろうなと思います。病棟でよく怒られている看護師でも、その子のことを気に入る患者さんもいらっしゃいました。いろんな看護師がいて、その看護師たちが一つのチームになって、患者さんを看られるのだと思います。

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