【お名前】 多幡 明美さん
【病院名】 石川県立高松病院
【分野名】 認知症看護
認定看護師の資格をとろうと思った動機・きっかけ
私が「認知症看護」の資格をとったのは2008年です。はじめて認知症の患者さんとかかわるようになった頃、入院してきた患者さんが、不安が強く、ケアを拒否したり、怒ったり、トイレ以外の場所で排尿したり、食べ物でないものを口の中に入れたりすることがあり、いつも対応に悩んでいました。コミュニケーションも障害されるためになかなか本人の思いやニーズが理解できませんでした。認知症にはいろいろなタイプの疾患があり、症状の現れ方にも特徴があります。その特徴を理解せずに対応してしまうと症状を悪化させてしまうことがあります。そこで、認知症についてもっと学習し、認知症の症状に応じた専門的なケアができるようになりたい、当院に入院された患者さんが、できるだけ安心して治療できるような環境を作ってあげたいという気持ちが強くなり、資格をとろうと思いました。
資格が実際の仕事に活かされていること
学校では専門科目として、認知症の病気の理解の他、認知症の方とどうコミュニケーションをとったら良いか、生活環境をどのように調整したら良いか、ケア体制をどのように作ったらよいか等の方法を学びます。学んだ後は、認定看護師として常に認知症の患者さんの思いに寄り添いながら、一人ひとりの人生を大切にして看護をおこなって行きたいと思うようになりました。
認知症の患者さんは、脳の機能の低下により自身の状態の認識が難しくなり、日常の食事・排泄・入浴などの生活にいろんな障害が起きてきます。でもすぐに何もできなくなってしまうわけではないので、現場のスタッフと共に患者さんの状態をアセスメントし、できることを見極め、安心して自立した生活ができるようにと援助しています。スタッフと共にかかわっていた時に、患者さんに笑顔がみられ良い方向に変わった時は、資格をとってよかったと思うときです。
認定看護師を目指す方に伝えたいこと・
その他(教育機関に行くまでの家族や職場との調整など)
認定看護師を目指す方に、「入学試験を受ける前にどんな勉強をすれば良いのですか?」と聞かれることがあります。 私の場合は、県内に認知症看護の認定看護師さんがいなかったので、学校に入るためにどんな勉強をしたら良いのかわからなかったのですが、その前に日本認知症ケア学会が認定する「認知症ケア専門士」という資格や「ケアマネージャー」の資格をとっていました。そういう資格をとることで勉強できていたかなと思います。でも今は、ある程度こういう本を読んで勉強したら良いということは伝えられると思います。 その他に「どこにどういう学校(教育機関)があるのか」「費用がいくらかかるのか」もしっかり調べておく必要があります。
私は、東京にある認定看護師を養成する学校に行きました。約半年間は仕事を休み、職場や家を離れて生活することになります。私はその当時47歳で子どもが3人いて、高校生と小学生の頃でしたが、家族のみんなが私の気持ちをわかってくれ「行ってもいいよ」と言ってくれました。送り出してくれた病院や家族にはとても感謝しています。
12月に実施される入学試験(1次・2次)を受け無事に合格、翌年4月から念願の学校に入学できました。学校では講義や演習だけでなく臨地実習などもあり、レポートなどの宿題も多くありました。そこでできた級友はとても支えになっていました。学校の卒業試験に合格し卒業後に、はじめて認定看護師の受験資格を得ることができます。私も無事に卒業でき、その後日本看護協会の認定審査の筆記試験を受けて合格することができました。学校では看護師としての未熟さを痛感したり、合格するためのプレッシャーを感じたりすることもありましたが、新たな知識や技術を吸収できるので、学ぶこと自体はとても楽しいことでした。
認定看護師になるためには、「強い意志・こころざし」をちゃんと持っていないと続けられません。学校の同期生には、職場の事情で退職してきた人もいた程でした。「なぜ認定看護師の資格をとりたいのか」という動機がとても重要だと思います。
認定看護師としての活動実績(セミナー、講師経験など)
・院内外での研修経験が多く、これまで、県内の看護職員、グループホーム・介護保健施設の職員、地域の方(老人会等)を対象に講師などを行ってきました。(テーマ「認知症の理解」「認知症患者さんの接し方」「認知症予防」など)
・毎月1回、他病院で開いている「認知症出張相談室」にも出向いています。