認定看護師 【新生児集中ケア】

工藤淳子さん 【お名前】 工藤 淳子さん
【病院名】 石川県立中央病院
【分野名】 新生児集中ケア
 

認定看護師の資格をとろうと思った動機・きっかけ・取得時期

看護師3年目に新生児集中治療室(NICU)勤務となりました。当初は呼吸管理や輸液管理、授乳などをこなすことで精一杯だったように思います。出生率が低下している一方で集中治療を必要とする新生児は増加傾向を辿っていました。更に医療は進歩し、助からない命が救命できる時代となりました。そのような中、後遺症のある新生児や、わが子を可愛いと思えないご家族との関わりに悩み始めました。

次第に研修へ行く機会が増え、諸外国での新生児への成長発達を促すケアを知りました。新生児とご家族を支援する重要性を痛感し、取り組みを始めてから10年が経ちました。NICUは治療のイメージが強いかもしれませんが、看護を通して喜びを感じることができるようになり、やりがいにつながりました。それでも、どうにもならない経験や疑問も多く、さらに高度な知識や技術を学ぶ必要があると感じていました。師長からの後押しもいただき、2009年に新生児集中ケア認定看護師を取得しました。

資格が実際の仕事に活かされていること

新生児集中ケア認定看護師は、出生してから呼吸や循環が確立するまでの急性期に関わるケアを行います。言葉で表現する事ができない新生児の想いをフィジカル面でアセスメントし、代弁者になることも必要です。刻々と変化する病態や成長発達への支援を行います。また、子どもがNICUに入院することは、ご家族にとって思いがけない出来事です。妊娠期から早産の可能性や障がいを告知される場合もあり、産前からご家族への支援を行っています。
教育課程では、当初の知識や技術を学びたい目的を見事に覆されました。自施設で当たり前であることが他施設では違うこともありました。知識や技術は変化するものであり、ケアを行なう場合「こうあるべき」ではなく、「こういう考えもある」と捉えるようになりました。そして、安全・正確・快適・根拠・倫理の視点から考え、ご家族やスタッフと話し合いながらケアに取り組んでいます。

認定看護師を目指す方に伝えたいこと・
その他(教育機関に行くまでの家族や職場との調整など)

教育課程で学ぶ為には、県外で約半年過ごす必要がありました。時間や労力、お金も費やします。家族による家事と育児の協力があったお陰であり、職場の理解と応援や経済的支援があったことを感謝しています。
教育課程では、専門科目の知識は学んでいる前提で学習が進みます。読みたい本を持参しましたが、多くの課題をこなすことに精一杯で休日も読む余裕はありませんでした。スキルアップ以前に、看護師として、人としての原点から自分を見つめ直す機会となりました。

認定看護師は子どもやご家族に寄り添うことがとても大切です。臨床実習では子どもの観察や技術の不十分さを痛感し、涙を流すことも多く、内省の気持ちを忘れないことを学びました。
ストレスフルな中、先生方からは十分に感性を磨いて下さいと激励があり、戸惑いました。新生児もご家族もNICUでは危機的な状況下にあります。まずは、私自身が健康であり、ストレスに対処できなくては支援できないとの考えに辿り着きました。認定看護師を目指す方々には、日常的に課題が山積みな中で自分の限界を知り、感性を研ぎ澄まし、気分転換を行いながら継続できる術を身につけていただければと思います。

これまでの話から、認定看護師への道のりは過酷に感じるかもしれません。分野によっても多少違いがあります。更に、認定看護師となる以上に、継続することに困難を感じている同志も多くいます。けれども、新生児集中ケア認定看護師となったことで得られた事は多くあります。全国に仲間ができ、院内では他分野の認定看護師と交流を持つ機会を得て、他職種の方とも情報交換を行なう機会が増えました。話し合いや自己研鑽を行う中で、疑問はジグソーパズルが完成するように解決する瞬間があります。そして、成長する子どもとご家族からの感動が次の原動力となっています。
エビデンスが乏しい新生児集中ケア領域ですが、看護実践を振り返り、NICUに勤務する仲間とともに知見を広めることがベテランナースとの違いの一つと捉えています。NICUで子どもとご家族に関わることができる時期は人生の一部にすぎませんが、成人するまでの責任を持つことができるよう、施設内、県内、全国へとネットワークを広げていきたいと考えています。

認定看護師としての活動実績(セミナー、講師経験など)

・院内外や看護学校での講師担当
・石川県看護協会主催の課題解決型研修では、金沢大学附属病院の新生児集中ケア認定看護師である谷内薫さんと共に分娩を扱う施設へ出向き相談対応し、5年経過。

・主な研究・執筆など
「シミュレーションを用いた新生児蘇生技術教育の効果」,日本看護学会:母性看護,2012.
「NICUにおける退院支援の実際 保健師との連携」,小児看護,2013.
「当院における超低出生体重児の褥瘡対策の現状と課題」,日本小児ストーマ・排泄管理研究会,2013
「NICUから始める虐待予防 愛着促進と気になる親と子へのかかわり」,日本未熟児新生児学会,2013.

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