認知症vol.4 療法

アルツハイマー型認知症の治療には、薬を使う「薬物療法」と、使わない「非薬物療法」の2種類があります。

薬物療法

アルツハイマー型認知症の治療薬には、以下のようなものがあります。

■アルツハイマー型認知症の治療薬

一般名 ドネペジル ガランタミン リバスチグミン メマンチン
製品名 (1)アリセプト (2)レミニール (3)イクセロンパッチ
リバスタッチ
(4)メマリー
作用機序 アセチルコリン分酵素解阻害 NMDA受容体阻害
適応 軽度~高度 軽度~中等度 軽度~中等度 中等度~高度
剤型 錠剤、口腔内崩壊錠、細粒剤、ゼリー剤 錠剤、経口液剤、口腔内崩壊錠 パッチ剤 錠剤
副作用 消化器症状
(10%以上)
消化器症状
(10%以上)
消化器症状
(10%以上)
10%以上のものはない
めまいなど

 

(1)アリセプト

脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンを分解する酵素の働きを抑えることにより、記憶障害、同じ事を繰返す、判断ができにくくなるなどの認知症の症状が進むのを遅らせます。通常、アルツハイマー型認知症の症状の進行抑制に用いられます。

アリセプト

(2)レミニール

レミニールアセチルコリンの量を増やすように働きます。その上で、アセチルコリンエステラーゼ(AChE)働きを抑えることにより、アルツハイマー型認知症による記憶・学習を改善することができます。


(3)イクセロンパッチ

イクセロンパッチ脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンを分解する酵素の働きを抑えることにより、記憶障害、同じ事を繰返す、判断ができにくくなるなどの認知症の症状が進むのを遅らせます。

貼るだけのパッチ剤のため、介護者の負担を減らすことができ、また、投与量を目視で確認できるため、服薬遵守や服薬継続にもつながります。


(4)メマリー

メマリー脳内グルタミン酸受容体サブタイプのNMDA受容体チャネルの過剰な活性化を抑制することにより、細胞内への過剰なカルシウムイオンの流入を抑制し、神経細胞傷害や記憶・学習障害を抑制すると考えられています。

通常、中等度および高度アルツハイマー型認知症における認知症症状の進行抑制に用いられます。


BPSDに対する薬物療法のポイント(認知症疾患治療ガイドライン2010)

  • 不安
    リスペリドン(B)、オランザピン(B)、クエチアピン(B)
  • 焦燥・興奮
    リスペリドン(B)、クエチアピン(B)、オランザピン(B)、アリピプラゾール(B)、バルプロ酸(C1)、カルバマゼピン(C1)
  • 幻覚・妄想
    リスペリドン(B)、オランザピン(B)、アリピプラゾール(B)、クエチアピン(C1)、ハロペリドール(C1)
  • うつ症状
    SNRI(C1)、SSRI(C1)、ドネペジル(C1)
  • 暴力・不穏
    リスペリドン(C1)
  • 睡眠障害
    ベンゾジアゼピン系(C1)、リスペリドン(C1)、ドネペジル(C1)、抑肝散(C1)

 

《Minds推奨グレード》

A:強い化学的根拠があり、行うように強くすすめられる
B:科学的根拠があり、行うようにすすめられる
C1:科学的根拠はないが、行うようにすすめられる
C2:科学的根拠がなく、行わないようにすすめられる
D:無効性あるいは害を示す科学的根拠があり、行わないようにすすめられる

最新老年看護学:水谷信子他編、認知症疾患治療ガイドラインより一部抜粋、日本看護協会出版会

非薬物療法

非薬物療法には、以下の方法があります。

リアリティオリエンテーション(RO)

リアリティオリエンテーションとは、「今日は何日なのか」「どの季節なのか」「ここはどこなのか」などの見当識障害を解消するための訓練です。

リアリティオリエンテーション
参考:認知症ケアの考え方と技術(2005):六角僚子、医学書院
    改訂・認知症ケアの実際Ⅱ:各論:日本認知症ケア学会編、ワールドプランニング

回想法

回想法回想法とは、対象者の思い出や記憶を引き出し、共感しながら精神的な安定や認知症進行を遅らせたり、さらには記憶力の改善を図るための訓練です。

これまでの人生を回想することで、自分の人生に起こったさまざまなできごとを確認し、意味づけることができる。

《効果》

  • 情動機能の回復
  • 意欲の向上
  • 社会的交流の促進
  • 発語回数の増加

 

参考:改訂・認知症ケアの実際Ⅱ・各論:日本認知症ケア学会偏、ワールドプランニング

 

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