認知症vol.3 さまざまな認知症

認知症は、疾病原因からいくつかの種類に分けられます。
そのうち、以下の4種類についてご紹介します。

(1)アルツハイマー型認知症(2)血管性認知症(3)レビー小体型認知症(4)前頭側頭型認知症

(1)アルツハイマー型認知症

認知症の中でもっとも多いのが、アルツハイマー型認知症です。よく見られる認知症外は以下のとおりです。

  • エピソード記憶の障害(とくに近時記憶)
    ※エピソード記憶でも、古い記憶や、意味記憶・手続き記憶は長期間保たれる。
  • 物盗られ妄想
  • 取り繕い反応(自身の欠陥を隠そうとする反応)
  • 失行:構成失行・着衣失行・観念失行・観念運動失行
  • 失認:視空間失認
  • 失語
  • 実行機能障害

アルツハイマー型認知症の特徴

アルツハイマー型認知症の特徴アルツハイマー型認知症の患者には、以下の特徴がみられます。
茶色いシミのような老人斑や神経原線維などが脳内に蓄積していくことにより、正常な細胞が急減することで脳が萎縮し、脳機能が低下するといわれています。

 

  • 老人斑(アミロイドβ蛋白)
  • 脳の神経原線維変化(異常リン酸化タウ蛋白)
  • 神経細胞の脱落
  • 広範な大脳の萎縮
  • 海馬の萎縮
  • 緩やかに進行する

 


参考:認知症高齢者の看護(2007):中島喜恵子編、医歯薬出版株式会社

脳の変化

アルツハイマー型認知症の患者さんの画像では海馬の萎縮がわかります。

アルツハイマー型認知症 脳の変化
画像提供:富士フィルム:埼玉医科大学国際医療センター 核医学科教授 松田博史 先生

アルツハイマー型認知症の経過

アルツハイマー型認知症の経過は以下の図のとおりです。
初期から後期まで、平均8年といわれています。

アルツハイマー型認知症の経過
認知症介護研究・研修東京センター(2008年):図表で学ぶ認知症の基礎知識、中央法規

(2)血管性認知症

認知症の中で2番目に多いのが、血管性認知症です。
脳梗塞や脳出血、脳動脈硬化など脳の血管に異常が起きた結果、認知症になるものをいいます。その主な特徴は以下のとおりです。

  • 脳の損傷部位・程度によって、障害が異なる
  • 脳梗塞によるものが最も多い
  • 麻痺や失語症を伴うことが多い
  • 初期では、人格変化や抑うつ状態などがみられる
  • 段階的に進行する
参考:認知症高齢者の看護(2007):中島喜恵子編、医歯薬出版株式会社

血管性認知症の経過

血管性認知症の経過は以下の図のとおりです。

血管性認知症の経過
認知症介護研究・研修東京センター(2008年):図表で学ぶ認知症の基礎知識、中央法規

(3)レビー小体型認知症

レビー小体型認知症認知症の中で3番目に多いのが、レビー小体型認知症です。
脳幹や大脳新皮質に、レビー小体という異常な物質が蓄積することが原因です。その主な特徴は以下のとおりです。

  • 認知機能の動揺
  • 詳細で具体的な内容の幻視
  • 特発性のパーキンソン症状
  • 繰り返す転倒・失神
  • 自律神経症状(起立性低血圧や便秘など)
  • 抗精神病薬に対する感受性亢進
  • 大脳皮質や間脳にレビー小体が多数出現
  • 後頭葉の血流低下
参考:認知症の病態:北村伸、看護技術、認知症ケアの実践ガイド、メヂカルフレンド社、2007

脳の変化

レビー小体型認知症 脳の変化
画像提供:富士フィルム 監修:医療法人相生会 中野 正剛 先生

(4)前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症とは、脳の前頭葉や側頭葉の委縮がみられる精神疾患「前頭側頭葉変性症」のひとつです。「前頭側頭葉変性症」は、症状によって以下の3つに分けられます。

前頭側頭葉変性症の3種類

前頭側頭型認知症は、脳全体が委縮するアルツハイマー型認知症とは異なり、主に脳の前頭葉と側頭葉に萎縮が起きることで発症する認知症です。 詳細な原因は不明ですが、患者が初老期の比較的若い人に多いのが特徴です。主な症状は以下のとおり。

  • 病識の欠如
  • 脱抑制
  • 無関心
  • 感情・情動変化
  • 自発性の低下
  • 常同行動
  • 食行動異常
  • 被影響性の亢進
前頭側頭型認知症の特徴とケアのポイント:品川俊一郎、認知症ケア学会誌、2011.Vol.10-1

脳の変化

前頭側頭型認知症 脳の変化
画像提供:富士フィルム 監修:医療法人相生会 中野 正剛 先生

 

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