実際にどのようにマネジメントしていくのかを、American Society of Clinical Oncology(ASCO)のカリキュラムから改変したチャートを用いて示しました。
「呼吸困難の訴え」があった場合、「治療可能な原因」があるかどうかをまず評価します。この「原因治療」が可能であれば原因を治療します。
次に、「低酸素血症」があるかどうかを評価します。もし低酸素血症であれば「酸素」を使用すします。さらに、「モルヒネ」、「抗不安剤」を使用することをASCOでは推奨しています。重要なのは、それに並行して非薬物療法がきわめて重要な位置を占めているということなのです。
【適応】 低酸素血症
低酸素の有無にかかわらず、酸素投与が有効でありプラセボ効果があると考えられています。
酸素療法は、マスク・鼻カニューラにつながれていること自体が呼吸困難感緩和につながることがありますが、逆に、束縛感と感じる患者さんもいらっしゃいます。顔にかかる冷たい空気の動きが呼吸困難感に効果があるのは、三叉神経が刺激されるため、中枢性をもって呼吸困難感を抑制するのではないかと考えられています。
酸素療法は、投与方法やデメリットを考え、試してみる価値はあるとされています。
薬物療法に使用される薬物について、以下に説明します。
呼吸困難感の対象療法としての薬剤の、第1選択はモルヒネです。モルヒネにより、呼吸困難感が改善されることが、無作為比較試験という信頼性の高い方法で確認されています。モルヒネが、がん患者の痛みだけでなく、呼吸困難感に対しても有効であることは、現在の一致した見解です。
作用機所ははっきりとしていませんが、以下のようなさまざまな効果が関与すると考えられ、それらの複合作用によるものと考えられています。
呼吸困難感に対してモルヒネを使うことを躊躇する理由のひとつが「呼吸抑制」です。しかし、呼吸回数8から10回/分以上を目安にモニタリングを行い、以下の患者さんには少量から開始すれば問題ないとされています。
さらに、全身状態が良好で、呼吸困難感が軽度な段階からモルヒネを開始し、徐々に微調整していくことがすすめられています。全身状態が不良になってから使用するのではなく、使用開始時期を考えていく必要があります。
【適応】 呼吸困難感の訴えが強い、呼吸困難感のパニック発作、不眠
抗不安薬の有効性については、まだよくわかっていません。しかし、がん患者の呼吸困難感は、不安・精神的ストレスとの関連が強いことが多くの報告で示されています。そのため、抗不安薬の使用が奨励されています。
使用が奨められている例は 呼吸困難感の訴えが強い場合、呼吸困難感のパニック発作、不眠です。このような例では、呼吸困難感により不安が生じ、その不安が、さらに呼吸困難感を増悪させるという悪循環に陥っています。その悪循環を断ち切る点で、抗不安薬が役立つとされています。
【適応】 上大静脈症候群、がん性リンパ管症、放射線性肺臓炎、気道狭窄
ステロイドの有効性は、気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患などによる気道狭窄や気管支痙攣で確認されていますが、呼吸困難感という感覚に対してステロイドの有効性は認められていないため、効果の評価を適切に行う必要があります。
また、ステロイドには易感染性・消化管出血・高血糖・精神症状などの副作用があるため、注意が必要です。効果を適切に評価して使用し、漠然と投薬を続けてはいけません。
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