経口摂取不足分を補うための、過剰輸液によっておこると考えられる、食欲低下や浮腫の増加、皮膚トラブルが発生した症例について、終末期がん患者の予後予測「Palliative Prognostic Index」を用いて、水分管理カンファレンスを行いました。
・PPI6点以上となった時点、その後点数に変化があった時に適宜開催する。
・1日経口摂取量と輸液量を、1日必要水分量(15~25ml/kg/day)と比較し、病状と患者・家族の輸液に対する意向から輸液量を決定する。
参加者は主治医・受け持ち看護師・NSTリンクナース
・開催時間は30分以内とする。
総得点6以上で、3週間以内に死亡する確率は80%である。
※左右にスクロールできます。
Palliative Performance Scale | 10-20 | 4.0 |
30-50 | 2.5 | |
>60 | 0 | |
経口摂取 | 著明減少(数口以下) | 2.5 |
中程度減少(>数口以上) | 1.0 | |
正常(高カロリー輸液) | 0 | |
浮腫 | あり | 1.0 |
安静時呼吸苦 | あり | 3.5 |
せん妄 | あり | 4.0 |
全身状態の評価尺度の表です。
※左右にスクロールできます。
起居 | 活動と症状 | ADL | 経口摂取 | 意識レベル | |
---|---|---|---|---|---|
100 | 100%起居している |
正常の活動が可能 症状なし |
自立 | 正常 | 清明 |
90 |
正常の活動が可能 いくらかの症状がある |
||||
80 |
いくらかの症状はあるが 努力すれば正常の活動が可能 |
正常 または 減少 |
|||
70 | ほとんど起居している |
何らかの症状があり 通常の仕事や業務が困難 |
|||
60 |
明らかな症状があり 趣味や家事を行うことが困難 |
ときに介助 |
清明 または 混乱 |
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50 |
ほとんど座位か 横たわっている |
著明な症状があり どんな仕事もすることが困難 |
しばしば介助 | ||
40 | ほとんど臥床 | ほとんど介助 |
清明 または 混乱 または 傾眠 |
||
30 | 常に臥床 | 全介助 | 減少 | ||
20 | 数口以下 | ||||
10 | マウスケアのみ |
傾眠 または 昏睡 |
A氏 : 女性 80歳代 右下葉肺がん
2009年3月 左非小細胞肺がん、下葉部分切除術施行
2010年2月 右肺がんに対し、放射線治療
2011年2月 右肺がんの局所再発(胸膜肥厚、椎体骨肋骨浸潤)あり、緩和ケア目的で当院に紹介入院
【家族背景】 夫、娘、孫(長男)と同居
【キーパーソン】 夫、毎日面会あり
カンファレンスは、予後予測6点以上となった時、足背に浮腫が出現した時、経口摂取量が減少した時、経口摂取が不能となった時の4回開催できました。体重は4.4kg減少しました。
4回目カンファレンス(亡くなる4日前)、経口摂取が不能となった時
手背、足背に浮腫軽度あり。
必要最小限の水分量とし、生前のお姿に近い状態で看取りを迎えられるように輸液量を増やしませんでした。
「Palliative Prognostic Index」を用いたカンファレンスは、終末期がん患者の水分管理に有効であると言えます。