石川県立高松病院

坂上 章さん 【お名前】 坂上 章さん
【病院名】 石川県立高松病院
【ご紹介】 地域医療連携室に勤務。看護師長。認定看護管理者ファーストレベル修了。精神科認定看護師の資格を持つ。※取材日…2018年7月
 

看護師を目指したきっかけ

元々、車や機械関係が好きで、高校入学当時実は看護師を目指していませんでした。ただ、高校卒業間近になってもなかなか働きたいところが見つからない中で、看護師をしている叔母と、男性で看護師をしている従兄から「仕事決まったの?」と言われたことがありました。「まだ決めていないんだ。」と伝えると、「看護師という仕事もあるよ。なってみる気はない?」と言われたことがきっかけでした。当時は今ほど男性看護師がおらず、また精神科病院でどんな仕事をすればいいのかイメージがつきませんでしたが、「患者さんのお話を聞くことが仕事なんだよ。」と説明を聞いて、そんな風に人の力になれるのかと思い、「じゃあ、やってみようかな!」という気持ちになりました。

高校卒業してから高松病院に来て、まずは看護助手として働きながら、看護学校の准看護学科で二年間学びました。そして准看護学科を卒業した後に、正看護師の資格を取るための学科に入りました。この病院の現看護部長は、当時はその学校の先生でした。

実際に看護師になってみて

最初は、友だちの悩み事を聞くようなイメージしか持っていませんでした。しかし、実際に病棟に入った時にたくさん患者さんがいらっしゃって、お話ししてみると、私が想像していたよりも患者さんが相当苦しんでいるし、私が話を聞く程度で、患者さんが簡単に楽になるものではないことを知りました。それで、もっと自分自身が力をつけないといけない、とずっと思っていました。
新人の頃の私が患者さんの話を聞いても、患者さんは楽になった顔をしてくれないし、私自身が患者さんから相談を受けて、返事に困ることがありました。しかし、先輩看護師が患者さんと会話すると、患者さんが笑顔になっていて、その違いは一体何なのかわからなくて、いろいろな本を読んだり、先輩に習ったりしました。その時に習ったり質問したりしたのは、男性の先輩が多かったですね。話しやすかったですし(笑)。
その後、自分で患者さんとの関わり方を学んでいく事で、患者さんの反応が変わってきたなと思うようになり、自分の中ではどんどん患者さんとお話できるようになって嬉しい一方、これでいいのかという不安もずっとありました。しかし、その当時の師長さんが「それでいいよ。どんどんやっていきなさい。」と言ってくださったので、嬉しかったですね。

去年、認定看護管理者教育課程のファーストレベルを修了しました。そして、師長になり、患者さんとの対応は減りましたが、スタッフから患者さんの相談を受けたり、スタッフ自身の困りごとを聞くことが多くなりました。所属する地域医療連携室では、電話による受診相談や受診調整、訪問看護を行っています。

看護師としてのやりがい

月並みですが、病気で苦しんで入院された患者さんが回復し、笑顔になって退院されることが嬉しいですね。また、何年かぶりにバッタリお会いした患者さんが、私のことを覚えてくれていて話しかけてくれることがあります。そして話しているうちに、記憶がバーっとよみがえってきて。患者さんにそういったエピソードを覚えてもらえていることはやっぱり嬉しいです。

仕事をする上で大事にしていること

「わからないことを、わからないままにしない」ということです。わからないことはまず調べて、それでもわからない時は知っていそうな人を探して(笑)聞いています。もし、わからないことがあっても、周りの助けがあったりして何とか通り抜けられることもあると思います。しかし、次に誰もいない時に同じ場面に遭遇して、自分がその対処をしなければいけない時に、曖昧な記憶や知識で対処するのが怖いので、必ず調べるようにしています。

患者さんに対していい加減なことはしたくないので、患者さんの言うことにはしっかり耳を傾けて、患者さんにとって一番いいことは何か、どう答えることがいいのか、ということを考えています。わからないことをいい加減に返事してしまうと、お互いに不幸になるので、そういう時は返事を保留にさせていただきます。しっかりと、きちんと、患者さんに正面で対応したいという思いがあります。

看護師を目指す学生へのエール

石川県で言えば人口も減少している中、高齢化がどんどん進み、高齢の方の身体疾患が出てきたり、認知症が出てきたりして、看護師の需要はすごく増えていると思います。そこで、やっぱり看護師になってほしいなという気持ちがあります。看護師として一人前になるまで途中で苦しくても、看護師はチームで動くことが多く、他の看護師みんなが支えてくれる職種だと思っているので、多少の不安があっても看護の道へ踏み出して欲しいなと思います。

私が働きながら看護学校に行っていた時は夜勤もしていました。その時は周りの人たちの支えがありましたし、一緒に学校に行っていた同僚や年の近い先輩もいたので、いやなことや苦しいことも分かち合うことができました。辛いことを一人で抱え込むのではなく、安心できる仲間と話し合って、次の日に向けてリセットできるのは良かったです。少しでも看護師に興味があったら、一度は看護師の職場を見学してほしいなと思います。

また、男女問わずどんどん高松病院にきてほしいなと思います。精神科ならではの話ですが、患者さんに看護師が付き添っていれば大丈夫な時でも、どうしても人手が足りないために患者さんが自由に行動できない、ということがあります。やはりスタッフが沢山いれば、患者さんの行動制限は最小にできるだろうし、どんどん訪問看護ができれば、退院できる患者さんも増えるだろうと思います。特に長期にわたり入院されている患者さんは、病院が生活の場になっている方が多いので、外に出て、買い物をする等の自己決定をする体験の中で、自由や自信を再度取り戻してもらえたなら嬉しいですね。そのためにはやはりスタッフはいればいるほどいろんなことに挑戦できると思っています。

現役男性看護師へのエール

今はどんどん男性看護師も増えてきて、社会的認知度も高くなってきています。以前は男性看護師はこういう場面では遠慮してとか、精神科以外の診療科にはあまり入れないような雰囲気もありました。しかし、今は内科や小児科などのいろいろな診療科で働いています。例えば小児科なんかでは、男性看護師がいると子どもたちの反応が全然違うと聞くことがあります。子どもたちにとって、お父さんやお兄さんのような感じでしょうか。
私も健康な子どもたちを理解するために、保育園へ実習に行ったことがあるのですが、子供たちがとても慕ってくれて、実習が終わる時に保育士さんに「ここに就職して」と言われたこともありました(笑)。小児科とかの特定の科ではなくても、男性の患者さんが、女性の看護師に話しにくいこともあるので、男性女性どちらの看護師もいることが、幅広いニーズに応えることになります。各々の科で、これからの後輩に繋がるように、そこでしっかりとやっていってほしいなと思います。

また、自分が知識を深め、技術を高めることで、患者さんにできる看護が変わるので、ぜひ看護の専門性を高め、研鑽を積んでいってほしいと思います。高松病院では認定看護師を目指す方を応援していますし、大学院に行きたい方には勤務の配慮をしてもらえるので、学ぶ環境が整っています。私は精神科認定看護師を取って、自分を見つめ直した時に、自分が弱い所は研究だなと感じました。その後、大学院に行ったことで、すごくものの考え方や捉え方が変わった気がします。自分が臨床で「これはどういうことだろう?」という疑問を持った時は、まず先行研究があるか調べ、研究があればその結果を臨床で使えるかを考えます。大体の研究がそうだと思うのですが、臨床の中で研究したいという動機が生まれて、最後には結果が臨床に返っていきます。そういう意味で言うと、研究資料を読むことで、臨床に活かせるものも多いと思います。男性看護師の方々には是非、研究とかにも力を入れてほしいと思っています。

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