石川県立総合看護専門学校

寺井 翔一さん 【お名前】寺井 翔一さん
【学校名】石川県立総合看護専門学校
【ご紹介】大学卒業後、県立中央病院に入職。2021年より県立総合看護専門学校で勤務。成人看護学の授業を担当。第二看護学科2年生の副担任。
※取材日…2022年3月
 

看護師を目指したきっかけ

「男性看護師あるある」みたいな感じなのですが(笑)、最初は全然看護の道に進む気がありませんでした。高校生活の中で大学の進路を決める時に、最初は工学系に行きたいと思っていました。ただ、数学がどうしてもできなくて、進路に迷いが出ました。
そんな中、高校三年生の時の担任の先生から、「こんな道もあるよ」と看護の道を勧められたことが最初のきっかけになりました。
私は地域のこども会や金沢市のイベントのボランティアを、中学生の時から高校生になってからもずっとしていました。県内外でそのボランティア活動をしていたことが表彰されたこともあり、その担任の先生が活動のことを知っていたので、「そんな風に人の近くでサポートする仕事もいいんじゃない?」という風に勧めてもらいました。
最初にその話を聞いた時は、「自分が看護師?」という感じがしましたが、その後看護師がどういう仕事か調べていくうちに、「看護っていいな」「将来仕事としてやっていけるといいな」と考えが変わってきました。
看護の道に進むと決めた時、両親には「あなたが看護師の仕事をできるの?」とびっくりされました。今でもたまに言われます(笑)。

看護師としてのやりがい・大切にしていること

病院に入職して、消化器外科・消化器内科・歯科口腔外科といった、外科系の病棟に配属されてました。その病棟で看護の対象となる患者さんは、手術を受けられる方がメインです。入職した時はその病棟で初めての男性看護師で、本校に異動になるまでその病棟で10年勤務しました。
手術を受けて元気になって退院していく患者さんが多い病棟で、そういう患者さんを看て、「自分がこの患者さんのために何か支援(ケア)出来た」という実感がわくと、「(看護って)いいなぁ」と思い、やりがいを感じます。もちろん感謝されるために仕事をしている訳ではないのですが、患者さんから「よかった」「ありがとう」と声を掛けてくれることが、何よりもこの仕事を続けられる力になります。

患者さんはなにかしらの病気になって入院しているので、元々生活している場所と違う場所での生活を強いられます。体も気持ちも大変ですし、コロナ禍になってからは社会とも隔離されているので、色々な負担が大きいと思います。
そういった患者さんの負担にきちんと気づき、一つ一つのことに自分が関わることで、少しでも苦痛を取ってあげるというか、穏やかに過ごしてもらえるようにすることを大事にしたいなと思っています。
また、病棟内ではみんな忙しいと気持ちの余裕がなくなって、ピリピリしてしまうこともありますが、穏やかな雰囲気でみんなが協力できるようなチームとして、看護に取り組めたらいいなという気持ちがあります。そして、ちょっとでもそのまとめ役になれたらいいなと思っています。
人と関わる仕事は楽しいですね。だから大変なこともありつつ、なんとか病院で10年間楽しくやってこれたと思います。

病院での勤務から学校での勤務へ

本校へは、異動の希望を出して着任しました。
病院では、毎年看護学生の実習の受け入れをしています。病棟内では実習担当の係をやっていて、学生と関わる機会が多かったです。学生と接するのが前々から好きな方でしたが、学生を見ていると楽しそうに実習しているなと感じ、そんな学生と自分も直接関われたらいいなと思いました。
そして、実習だけではなく学校生活まるまる含めて、学生の教育に携わりたいという気持ちがどんどん強くなり、学校への異動希望を出しました。

今は異動してまだ1年目です。将来的に病院に戻ることは考えてなくもないですが、せっかく希望して異動してきたので、教員として出来ることは沢山勉強していきたいと思っています。
ここで学んだ学生が最終的に臨床に出ていきます。臨床での新人教育と学校での学生教育は繋がっていると思うので、その一貫した流れの中で教育に携われたらいいなと思います。
今年4月からは教員として2年目に入ります。1年目は右も左も何もわからないまま過ごしたので、2年目は自分の視野を広げられればと思います。
1つ何かやるにしても、それに集中しないとできないような1年だったので、余裕を持っていけたらいいなと思います。初めての授業の反省もこれから振り返らなければいけないので、その反省を生かして、学生の反応も振り返って、よりよい授業を作っていきたいなと思います。

意外と授業以外のことでも学生と関わります。本校では勉強の仕方を伝えるなど、学生への生活指導もあります。看護師にとっての知識や技術を学ぶことはもちろん大切ですが、この学校では人間としてどうあるかも大事にします。
提出物の提出期限や遅刻などすごく厳しいので、学生にとっては辛い部分もあると思うのですが、そういうことは社会で生きていくうえで大切になると思います。時間や約束をしっかり守ること、社会人として一般的なことを生活指導として伝えます。
そして、本校では学生の主体性を大事にしているところもあり、学校祭は学生メインで行います。そこに教員も少し加わるなど、勉強以外でも学生と関わることが多いです。
学校祭の中でスポーツを行うのですが、今はコロナ禍で身体接触ができないので、距離を保ちながらどう楽しむかを考えました。令和3年度の学校祭では、身体接触が少ないペタンクを行いました。また、ペタンクは障害をお持ちの方も楽しめるスポーツということで、障害を持っている方にも目を向けられる機会になり、学生たちは工夫を凝らして考えてくれました。

授業を通して伝えていること

現在、学校では成人看護学の領域を担当しています。成人というと、人間のライフサイクルの中の15歳頃から65歳くらいまでの長い期間です。その間に起こりうる疾患との付き合い方や、その治療に関することがメインの領域です。
成人看護学の中でも領域によって専門性が高いので、周手術期やターミナルケア・緩和ケアといった終末期、リハビリテーションといった障害から回復していく時期など、それぞれ大事にしなければいけない視点が違います。その核になるようなところは、学生にしっかり伝えたいと思っています。
そして、「看護って楽しいな・おもしろいな」と思ってもらえるよう、学生の興味を引き付けるような授業をするように心掛けています。

学生は一番臨床の話に興味を持ってくれます。教科書を読むだけでは退屈しているようにしていた学生が、「自分は病院でこんな経験をしてきたよ」と言うと、急にむくっと起き上がって目を輝かせて聞いているということもあります(笑)。
なかなか本を読むだけでは学生に響きにくいことでも、自身の看護経験を話したり目で見て分かることだったりすると、学生は興味を示します。そして授業を通して、自分がなりたい看護師像が見つかるといいなと思います。

自分が学んだ学校では、男性看護師の教員が結構いました。男性の先生は苦労話や学生の時の話、働いてからの話などをしてくれました。学校に男性が少ないからこそ、団結力や横だけではない縦の繋がりがあると思います。そういったところで、先生や先輩の経験を知ったうえで、現場に行けるというのは強みになると思います。
20年以上前に1人いたという話は聞いたのですが、現在本校で男性の教員は私ひとりです。男性の学生にとって、心強い存在になりたいなと思います。

看護師を目指す学生へのエール

自分の学生時代を思い出すと、勉強よりもプライベートの比率が非常に大きかったと思います(笑)。1対9でプライベートを大事にしていたくらいの生活をしていました。
友人や先輩・後輩との付き合い、恋愛、サークル、アルバイト、ボランティアなど、学生の時ではないとなかなか本腰を入れてできないことが沢山あります。
勉強ももちろん大事ですが、勉強以外のことも大事にして、学生生活を送ってほしいなと思います。それがきっと、自分の考え方や看護の見え方に影響してきて、沢山のことを経験すれば経験するほど、視野は広がるかなと思います。コロナ禍でいろいろな経験がしにくいと思いますが、将来に活きると思って、いろんなことにチャレンジしてほしいなと思います。
私自身は大学時代にいろいろなことをしていて、バドミントン部に入って大会に出たり、部活の仲間と遊びにいったり飲みにいったりと、すごく楽しかったです。
また、部活をしつつも週4回くらい飲食店でアルバイトをして、バイト先でも新しいコミュニティができました。学生時代しかできないことを、大事にしてほしいなと思います。

コロナ禍になってから看護学校に入ることを決めた学生の中には、大変な状況の中で働く医療従事者の姿を見てかっこいいと思い、看護を仕事にしたいと志した方がたくさんいらっしゃると思います。ちょっとでも使命感みたいなものを持って、看護の道へ進学しようと思われたなら、学ぶ姿勢もそうですし、卒業して仕事を始めてからも、辛いことも多いですが頑張れるのかなと思います。

現役男性看護師さんに向けて

私自身、看護師としては11年の経験でそんなに長いほうではなく、よっぽど自分よりも先輩方が活躍されていると思います。そういう先輩方と、ぜひ繋がりたいなという思いがあります。ナースナビで男性看護師の座談会のページを見ましたが、院内であんな機会があるといいなと思います。
能登の方の病院に、看護協会での男性看護師の会の活動を積極的にやられている方がいらっしゃるのですが、そういった活動に参加出来たら楽しそうだなと思います。

男性看護師には同じような苦労があると思います。働き始めた時には、「患者さんと接するのは難しいな」「女性の患者さんに自分みたいな若い男性看護師が看護に行ってもいいのかな?」「年齢が近い患者さんと関わるのは難しいな」と思いました。
それから10年以上経ちましたが、これから10年20年経って自分が40代、50代になった時に、じゃあ女性の患者さんと上手く関われるかなと思ったら、それもなかなか難しいなと思うのです。
進路に悩んでいる男性看護師は結構多いと思います。看護師になって終わりではなく、なってからの方が悩むのではないかなと個人的には思います。
そうなった時に、教育や研究の方に行く道もあるし、ご自身で施設を立ち上げられた方もいるし、いろんな看護の道を知ることができるいいきっかけにはなるのかなと思います。キャリアを構築するうえで、他の男性看護師との交流は有益になるのではないかなと思います。

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