医療法人社団浅ノ川 浅ノ川総合病院

中瀬 美恵子さん 【お名前】 中瀬 美恵子さん
【病院名】 浅ノ川総合病院
【役職名】 副病院長 兼 看護部長 兼 認定看護管理者(その他、病院経営管理士・診療情報管理士)
【これまでのご経験】
学校卒業→国立・公的・民間病院で勤務→浅ノ川総合病院
産婦人科以外のほとんどの科目の担当経験あり。看護部長歴約10年。
               ※取材日…2016年5月
 

看護部長のお仕事について

今、何を見つめているかといったら「経営」ですね。現在、副院長職も持っているので、看護と経営の両立をどうするかを日々考えています。看護職は病院の3分の2くらいの人数がいるんですが、この人たちが右に行ったり左に行ったりすることで、病院の経営が潰れたり栄えたりするのをよく知っています。そう考えると、看護はすごく重要なポジションだと思います。

そして、経営というのは、病院がどういう方針を目指していて、利潤がどれだけ上がっていて、現実がどうなんだということを、現場に分かりやすく伝えていく役割もあります。そのために、看護はなにをしなければいけないか、ということをかみ砕いて落としていく必要があり、その役割を担っています。
現場の一人一人に私が伝えることはなく、師長に伝えます。それぞれの病棟で師長ごとの色があるので、師長に日々刻々と変わる数値を伝えます。業務上で課題があったときも、解決方法を教えてしまうと管理者の思考がなくなってしまうので、「どうしましょう?」ということだけ伝えます。そうすると、管理者自身が部署の経営を考え、経営スキルを磨くことに繋がります。だから、当病院の管理者は、物事をよく知ってるのではないかなと思います。
また、世の中の情報をダイレクトに伝えるようにしています。世の中の様々な変化も、伝えるべきことは伝えるようにしています。情報を集めるために、いろいろな研修、学会などに出て行って、情報をキャッチしてくるようにしています。自分のフィルタを通して、みんなに伝えていくという役割は大事なんじゃないかなと思います。

看護に関する数値はすべて吸い上げていますし、逆に経営者に伝えるという役割もしています。上から下へもありますし、下から上へ伝えるという役割もあります。その作業をするのに結構時間がかかります。日々刻々と変わる物事の現状報告を、院長にお伝えするのは大事な仕事です。毎日ミーティングをして、問題を早いうちに解決するようにしています。大きい問題になってからだと遅いですから。院長は問題がないかを逐一聞いてくださいますし、問題を聞いて「私が出る」という時は院長自ら出てくださるので、すごく頼りがいがあります。院長にお伝えした結果をみんなに伝えると、みんなも安心できますし、やりがいにも繋がるのかなと思います。

看護の面については、私が直接お一人お一人の患者さんの看護に意見することはありません。個々の師長さんにおまかせしています。この病棟の方向性がおかしいというようなことは、本当に大きい問題にならないと上がらないですが、そういうことはほぼないです。ただし、年に一回看護部の理念について話す機会があるので、私が看護をこういう風に考えているということは、きっちりお伝えします。日々一つ一つの行為の中に理念が常にあるということとは踏襲して欲しいと思っています。大きな問題が上がらないということは、みんな理念をきっちりと考えてくれているのかなと思います。あとは、病棟を回っている時に、日々の対応を見ていて「立派だな~すごいな~」と思って帰ってきます。また、退院なさる方に任意で「満足度調査」をしていて、ここずっと看護師に対する感謝の言葉を頂いています。それは患者さんに喜ばれるケアをしているからそういった言葉を頂けるんだと思いますし、それを一つの指標にしています。

仕事のやりがいについて

患者さんからの嬉しい声ももちろんですが、管理者の成長にもやりがいを感じます。やっている仕事内容や自立した姿を見ていて、「立派になったな~!」と部下の成長を見て嬉しくなります。そして、看護が結果を出して、経営指標がすごくよくなっていったときもやりがいを感じます。師長などの管理者もそうだと思いますが、ナース達が成長してくることに対する喜びはすごく大きいと思います。それだけ成長してくるということは、管理者自身も成長しているんですよね。

看護師のキャリアプランについて

ナースたちは、どんどん自分たちのやりたいところに進んで行けばいいと思います。認定でも専門の分野があったり、ジェネラルがあったり、マネジメントの世界がありますよね?そのようなところは、自分自身の向き不向きがあるから、選んだらいいと思います。私たちはこういう道があるんだという案内とともに、それを支えていくだけですね。当病院では認定看護師の経済的支援がすごく大きく、認定看護師は増えてきていますし、本人たちの進みたい所に向かって支援しています。

私自身は病院経営管理士という資格を、2年間コースで通い、取得したのですが、その時にはネットワークができたり、学びになりました。また看護部長職になった時に、なにもできない自分を感じることがあって、自分が責任あるポジションにいていいのか、みんなを動かして行くことができるのかと考えた時に、大学の2部に入って夜は毎日通いました。さぼったのはたった一コマしかないんです(笑)。若い子達と一緒に体育もし、ゴルフもし、一輪車にも乗って(笑)。日勤終わったあと、21時まで毎日大学に行きました。高校の公民系の教職課程や教育実習もやってきたので、教員の免許もとりました。金沢経済大学2部の4年間のうち、2年間ディベートをし、1番をとったこともあったりと、面白い世界をいっぱい体験してきました。
4年間は休みもなかったですし、土曜日曜は病院の夜勤チーフもしました。39歳から4年間行きましたから、あの頃は体力あったんだなって思います。大学で難しい数学の試験等も受けて、全てクリアして、よくやったなと思います。それらを越えてきた自分というものに、自信がつきました。

その後に、勉強ぐせがついたのも含めて、絶対2年間で卒業するぞを合言葉に、大学院にも2年行きました。身体はものすごく壊しましたが、大学院でもやれる自分ということに自信がつきました。過酷に耐えられる私、というのを知り、それは自分の支えになりました。
とにかく、看護部長職をするにあたって、なんにも持っていなかったので、自分に自信をつけるために勉強しました。その他に、診療情報管理士や認定看護管理者も勉強して、資格をとりました。
先の事としては、このポジションにつかないとできないことがいっぱいあるので、次の後輩に譲らないととは考えています。

面接などで学生に質問すること

「なぜ浅ノ川を選んで、なにを求めていますか」ということは聞きますね。給与やキャリアプラン等、いろいろなものがあると思うのですが、「なにを一番望んでいますか」はいつも確認します。学生さんたちが病院に入職する時に「心配ごとはないですか」「どういう病院だったらいいですか」ということを聞きます。資質は問題にはならないので、相手が何を望んでいるかというところを確認したいですね。逆に大抵の学生さんは、一番に教育プランを聞いてきて、その次は職場の雰囲気がいいかどうかを質問してくるでしょうか。

学生へのアドバイス

まずは「入ったところで一生懸命頑張ってほしい」と思います。そして、「相手のせいにしてはいけない」、ということも伝えたいです。問題が発生した時に相手のせいにしては絶対だめだから、自分自身がどうなんだということを考えてほしいということを、どのナースにも言っています。
その他に、「困った時はすぐに相談する」ということが一番だと思います。学生さんたちはなかなか話ができないと思うので、受け入れる側の組織にアドバイスした方がいいのかもしれませんね。入ってきた人たちは緊張して報連相すらできないので、「なにか困ったことはないですか」の聴き出しという、受け入れ側の態度が重要になってくると思います。あなたに関心を持ってますよというように、常に気をかけてあげることが大事だと思います。相手側がふんわりと受けてくれたり包んでくれたりすると、すごく安心感があります。

その他

看護部長になる前について

一つ前に勤めた病院にいた時に、臨床指導者講習会に行く機会がありました。 その時に、上智大学名誉教授のアルフォンス・デーケンという哲学で有名な先生がいらっしゃるのですが、その先生との出会いもあり、死生学に一時期のめり込みました。「人の死とは」「看護とは」を徹底的に振り返る機会があり、自分が今までしてきたことはなんだったんだろうと思うことがありました。 病院に戻ってすぐ、看護部長に「私は生まれ変わりました」と言って(笑)。看護部長も「それは衝撃的だった」と言っていました。転機ですね。

その看護部長とよく話をする機会があって、看護部長として悩んでいることを、若き私に相談されていたんです。「私はもっとやりたい看護があるの。ただ、なかなかそれを実現できない。」と仰って。その時に私は、「なにをいってるんですか。一番上に立つ人間が、自分の思いを継ぐ人間を育てるのが、当たり前じゃないですか。」と言いました。そしたら「あんた良い事言うのね~」と言われたのを絶対忘れません(笑)。振り返って、その言葉が自分に降ってきたなと、今思っています。
だから、自分のやりたい看護をしてもらいたいがために、看護部長職を目指さないかんということが、自分の中で初めからあったんです。この病院に来た理由もここにあるんです。初めからトップの座を狙う人間なんていないと思いますが、上にいなければやりたいことができないと思うんです。それと共に民間病院を選んだ理由もあって、自由自在になんでもできるんじゃないかという思いもありましたし、入ったらその通りでした。やりたいように変えていけるというのが民間病院の強みだと考えます。もちろん、賛同してくれる人も必要だと思いますが、ここに来てよかったなと思うのはそういうところですね。そして、自分のやりたい看護をやってもらえる人間を育てることができるのも重要ですね。

子どもが2・3歳くらいのときに、本当に休みなく研修に行っていた時期がありました。その頃に先輩ナースから「研修ばかりいってないで、子どもを看ることも大切よ」と言われたこともありますね。昔、作文の中で「お母さんは帰ってきたら寝てばっかりいます」って書いてありました(笑)。それと、もう一つ印象深かったのが、子どもから「患者と子ども、どっちが大事?」と言われたことですね。必ず言われることだと思うのですが。私はなんの迷いもなく「患者に決まっとろう」と言いました。理由として、「あなたたちは健康でしょ。患者さんはどこかがお困りで、病気できてるんやぞ。そこでそれを支援するのが私たちの役割なのよ。」と言ったんです。そこはずっと迷いがないです。子どもも理解したんだと思います。今もグレてないですし(笑)、今も支援してくれ、尊敬していると言ってくれます。大学に行き始めた時も、子どもの面倒を見てくれていた義母が倒れたので、大学を辞めようと思ったのですが、小学生と中学生だった子ども達に「お母さんが志した事は最後までやりなさい」と言われました。そういう家族の支援もあったので、乗り越えることができました。今も遅くなったらご飯を作っていてくれたりと、支援してくれています。家族のお陰で今があるというのは、いつも思います。

好きな言葉・座右の銘

座右の銘は特にないのですが、何事にも感謝することが大事かなと思っています。なにをしても感謝することと、今ここにあることいることそのものに日々感謝することですね。「ありがとう」という言葉は、どんな時でも一日に何回も言うように心がけています。
いつも他人の為にということを優先したいなと。「利他の精神」ってよく稲盛和夫さんが仰ると思うのですが、その精神は絶対的にいえる事なので、最終的には自分にも戻ってくると思いますが、常に気がかりは周りの人ですね。困っている人や弱い人に、なんらかの支援をしたいなと思います。

休日について

休日はだららららーんと、すごくオフです(笑)。家族に言わせれば、職場に出た顔と家の顔が全然違うらしくて、娘がたまたま病院に来た時に母の姿を見て、他人だったと(笑)。オンオフがすごくハッキリしています。それこそオフは化粧も一切せず、髪はくしゃくしゃのまま、室内着を着てぼえ~っとして完全オフで、毛穴までオフになるみたいな(笑)。ただ、本は読みたいので、読むというよりも集めておきます。学会に行った時に、立派な先生が本を紹介する時があるんです。同じものを読みたいと思った時は、その場ですぐ買ってしまいます。積んでおくだけで、その先生に近づいた気分になったり(笑)。
読むジャンルは管理学系や人としてどうするかというものが多かったり、紹介があった本だったり。稲盛先生はほとんど読みました。本で読んで、こういう風に行動するといいなということで共感するものは取り入れますね。研修等、遠方への移動の最中にしか集中して読めないですね、家だと集中できないです。家ではちゃんと主婦しています(笑)。通勤で車に乗ったとたんにスイッチが切り替わって、今日はなにするという構成を考えます。短期間集中型でダラダラしないタイプなのです。

物事の思考も、「あれが嫌」「これが嫌」という思考を持たないようにしています。なるべく美しいもの・綺麗なもの・楽しいものなど、自分の心を上向きにするものに触れるようにしています。暗いものはだめで、テレビでもそういう性質のものは一切見ないようにしています。花を見たり、海を見たりするのが好きです。
眠れないほど腹が立つことも過去にはありましたが、表にはそういうのは出さないようにしています。人と人との関係はよくしておきたいし、建設的な話をしたいですから、マイナスの捉え方はしないように、とにかくその人のいいところを見るようにします。仕事なので、そこで目的を達成できるようなやり方をしないと。敵をつくったところで、なんのプラスにもなりませんし。人は宝でなければいけないと思います。

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