【お名前】 中西 容子さん
【病院名】 金沢市立病院
【役職名】 看護部長、認定看護管理者、保健学修士
【これまでのご経験】
学校卒業→国立病院で勤務(脳外科・耳鼻科・産婦人科外来)→金沢市立病院(外科・消化器内科・手術室・循環器内科・結核病棟など)
看護部長4年目。※取材日…2016年6月
看護部長のお仕事について
仕事のやりがいについて
元々、看護師になろうと思ったきっかけは、とにかく早く自立したいという思いからでした。出来るだけ家から遠いところに行きたかったのですが(笑)、親からは「何をするかわからないから、北陸三県から遠くへ行ってはだめ」と言われて。それで富山県から石川県に来ました。看護師に憧れがあったわけではなかったのですが、私の部活の先輩が看護師を目指して進学されて、その時に「看護師という仕事があるんだな」と認識しました。その後、「看護師さんてどんな仕事なんだろう?」と調べていくうちに、国家資格だから資格があればどこでも働けるなというふうに思いました。
実際に看護師になってみて、人と関わる仕事で対象の方は様々ですし、同じ病気でも背景が全然違うので、1つのパターンに収まらないということが大変ですが、そこに興味深さを見出しました。看護師の仕事は終わりがないので、そこがいいなと思いました。例えば、ものづくりの仕事は、何か製品を作るとかそのための開発をするということにやりがいがあると思うのですが、人と接する仕事は人との関わりがあって初めて生まれてくるもので、自分じゃない他人の方のお世話をするって奥深いんだなと、仕事をしながらすごく感じます。また、ずっと勉強しなきゃいけないなと思うのですが、そこがまたいいところでもあり、やりがいでもあるのかなと思います。医療の世界はすごく変化が速いので、学ばないと置いてかれると思います。いろんな便利なものが出てきていますが、やっぱり最後に残るのは人なので、人との関係性で成り立つ仕事であるからこそ、自分をどんどん磨かないといけないなと思います。看護師になってから、一度も看護師を辞めたいと思ったことはないですね。
看護師のキャリアプランについて
自分の今後の夢としては、看護師がずっと急性期で働くのはしんどいですが、せっかく看護師は技を持っているので、看護師がずっと働けるようなところを作りたいなとは思っています。年齢を重ねても看護師のキャリアを活かせるようなものを作りたいですね。
あとは、自分の次の人にバトンタッチしていく時に、できるだけ良い環境にしておきたいというのはあります。
面接などで学生に質問すること
学生へのアドバイス
これから看護師を目指す方には、看護師は大変ではありますがやりがいのある仕事なので、是非看護の現場を一度見てほしいと思います。看護体験などを通して、この仕事の貴さややりがいを見て感じて、目指してほしいなと思います。高齢社会がどんどん進んでいっているので、看護はすごく大事な仕事だと思います。それは病院の中だけではなくて、地域の中においても家族をケアする上でも役立つ仕事だと思います。
看護部長になる前について
私が学生で実習をしていた時に、脳腫瘍の患者さんを担当していたのですが、当時はあまり積極的な治療がされていなかったんです。麻痺や失語もあって。それでも患者さんの奥さんが面会に来て、一生懸命な感じに見えたんです。それなのにやっている治療っていうのが、ちょっとリハビリをしているくらいにしか見えなくて。それで、その頃の脳外科の医長の先生に受け持ちの学生として「なんでもっと積極的に治療をしないんですか」という失礼な質問をしてしまったんです。「家族があんなに一生懸命なのに、なんでなんですか。」ということをたしか聞きにいって。その時に先生に「なにを生意気なことをいっとるんや。」と言われたのですが、その後その病院に就職してからも、その先生に「あ、あの時の学生やな」と覚えていてくださって(笑)。それからはかわいがってくださいました。そんなこともありましたね。
また、大学からの卒業生も増えており、ちょうどその頃に院長の薦めがあり、「これからの管理者や上に立つものは大学院で学ぶことが大切だ」ということで、働きながら金沢大学の大学院に入って2年ほど研究をしました。それもすごく楽しかったですね。研究室に同期で入ったのが、私と学部からそのまま大学院に入ってきた自分の息子と同じくらいの学生でした。私は、その臨床経験のない学生の話が刺激的でしたし、彼女も私が臨床の現場での話をするのでそれが刺激的だったようです。全然かみ合わない2人でゼミをしていると、教授もすごく面白がって(笑)。大変でしたけど、違った意味での学びになりましたね。修了したのは東日本大震災の年だったのですが、災害支援に行っていたので修了式には出られなかったんです。後日、改めて教授から修了証書をいただきました。
この病院では、メタボリック支援外来があるのですが、患者さんの生活習慣の改善や減量が成功するパターンとうまくいかないパターンがあるんです。そこで、支援に関わっている看護師のタイプによって、結果が違うのではないかということを、大学院での研究テーマにしました。上から指導していくタイプの看護師や、患者さんに伴走して目標達成に向けて指導していくような看護師がいて、いくつかその看護師をタイプ分けしました。経験やキャリアではなく、看護師の指導スタイルによって、患者さんの成果や達成感などが違ってきましたので、それを研究としてまとめました。
自分が患者の家族の立場になって
私の両親が昨年、一昨年と病気で亡くなったのですが、患者の家族という立場を通して、看護師を見る機会がありました。いろんな看護師がいたのですが、心地よさを感じる看護師さんとそうじゃない看護師さんがいるというのは、家族の立場でも感じたので、ケアを受けていた私の親も「あの看護師さんはね…」とはっきりではないですが言っていました。その時に「うちの病院の看護師はどうなのかな?」「うちの方がいいかな」「うちと一緒だな」ということを感じましたね。自分ではない他人だからこそ、気配り・目配りをしなければいけないと思いますし、そういうことの大切さってなかなか座学では学べないことなので、そういうことは若い看護師に伝えたいなと思っています。
そういうことを思うと、私たちの先輩にあたる60・70代ってものすごく技を持った方たちが多かったなと思います。今は家庭内の教育も看護の教育も変わっていますし、若い方もどんどん変わっています。最近の入職時の研修って、「社会人として」や「しつけ」というところから入るんです。やっぱりできていて当たり前ということを知らない・出来ていないということが多いんです。でも、それは患者さんには通用しないことですから、きちんとしなければいけないことですね。
地域との連携
好きな言葉・座右の銘
この間、相田みつを展を見る機会があったのですが、すごく感激しました。書体も素敵なのですが、書いてある文章がどれも素敵で、感銘を受けました。「セトモノと~」とCMで見かける言葉も相田みつをの言葉だったんだなって展示を見て知って。
好きな言葉で言うと「感謝」ですかね。結局、自分ひとりでは何もできないので。感謝の気持ちがあれば人と争うこともないですし、面白くないことがあったとしても、「ありがとう」と一言言えば、おだやかになりますし。自分への戒めかもしれないですね。ありがとうという言葉は簡単ですが、ありがとうって言えない時もあるじゃないですか。でも、やっぱりそこを意識して言うことでおさまるものはおさまると思うので。
休日について
ここ数か月は、就職説明会や病院見学会、協会・連盟関係の会、採用試験などで、休日も仕事をしていました。しっかり休みが取れる時には東京へ歌舞伎を見にいったりします。趣味ですね。猿之助さんや先代の勘三郎さんが好きです。私が師長会でよく歌舞伎のことを言っているものだから(笑)、師長さんも東京での研究会のついでに見に行ってましたね。
その他の休日の過ごし方としては、孫の世話もしていますね。まだ10ヶ月で笑顔に癒されます。
ON・OFFはつけているつもりですし、仕事は家に持ち込まないようにしています。大学院で研究をしていた頃に、家で論文を書いていたこともありますけど、今はそういったことも一旦終わったので仕事は病院の中だけでしています。
・金沢市立病院