恵寿総合病院

本橋敏美さん 【お名前】 本橋敏美さん
【病院名】 社会医療法人財団董仙会 恵寿総合病院
【役職名】 看護部長
【これまでのご経験】
看護学校卒業→大学病院で5年勤務(CCU)→恵寿総合病院(消化器外科系・内科系・ICU・外来)
看護部長歴2年目。 ※取材日…2016年8月
 

看護部長のお仕事について

経営にかかわることがメインの仕事です。
看護職がかかわる診療報酬に関するデータの収集や資料の作成をしています。今年も診療報酬の改定がありましたが、新しく収入になるようなものをチェックして、いかに当院がとれるのかということをシミュレーションしながら考えています。その他、スタッフの研修修了者状況を把握しています。これらは診療報酬に繋がるケースもありますので大切です。

毎月の業務として、各部署の時間外業務時間のデータを把握しています。月々の増減を師長にコールし、「どんな状況であったのか」や「妥当であったのか」を確認しています。月20時間超えは私たちの中でも厳しいので、師長に「先月は20時間超えていたよ」という事を伝え、時間外業務負担を減らしてほしいということを指示しています。健康を管理して欲しいというのもありますし、帰りが遅くなると疲れますよね。看護師の中には、時間外が多くて大きな病院から当院に移って来たという方もいるので、総合病院ではありますが、時間を上手に使って早く帰れるようにということを考えています。個人によっても、仕事の段取りがうまくて早い人と時間がかかる人がいますし、その人がどこまで仕事がしたくて残っているかというのもありますが、本人に自覚してもらうように話はしています。からだへの負担が少なくなるよう、働きやすい環境づくりをしたいと常に考えています。管理が把握するデータは人員配置にも活用し、どの病棟に何人のボリュームを置くかというのを考えています。

今年は「看護方式を変えてみよう」という取り組みがあり、福井大学医学部付属病院が開発したPNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)という看護体制を今年4月から導入しました。3年でなんとか定着させるように師長たちには話をし、PNSの開発者を呼んで講義をしていただいて情報を提供してもらいました。あとは現場がどう動くのかを師長や主任に伝えて、現場の動きを見ている状況です。この方式を導入したのも、業務が忙しいというのもありますが、看護が途切れないようにすることが目的です。今までは固定チームナーシングで、担当している部屋が固定されている中でチームが全体を把握する形だったのですが、PNSは部屋は関係なしに、ばらばらの部屋の患者さんを受け持つので、受け持っている担当者が一番分かっています。そのバックにグループがあって、お互いをカバーしあうというところがあるので、今までと違う方式を入れて看護の質を上げたいなと考えています。あとは、新人や若い看護師さんが1人でベッドサイドに行くのではなく、ペアで行けるので、そういうとこでは心強いかなと思いますね。ただの「ペア=頼り切るシステム」ではないので、お互いの強みを出してお互いを補完し合うということを学んでもらえたらと思います。新人も育ちやすいと思いますし、患者さんにとっても理解してくれる看護師さんという形でいいのかなと思います。PNS導入による副産物に、時間外や残業が減ってくるという話が開発者からありました。そうすると働きやすい環境にも繋がるかなと思いますので、この3年でそのミッションをなんとか達成したいというのはありますね。

師長の方から看護師が悩んでいるという話を聞くこともありますが、悩んでいる看護師と直接面談をすることもよくあります。看護部の部屋は常に開けっ放しにしています。スタッフがすっと入りやすいようにしたいという考えからです。部長室はなく、みんなと一緒に働いていますが、特に個別の部屋がなくても問題ありません。病院内の狭い空間をどう過ごすかというところと、私の机の前に白い机が置いてあるのですが、そこは師長が集まって話をしてくれればと思っています。自由にそこに来て、話や作業をしてもらえばいいかなと思いますし、師長にも現場にいて仕事に集中できない時は、いつでもここにパソコン持って来ればいいよと言っています。でも、なかなかみんな来ないですね(笑)。でも、日中に話に来た師長さんには、コーヒーで息抜きして現場に戻ってもらっています。
スタッフの悩みごとについては、一時ある部署が順番に相談に来るような時もありました。話を聞くと、すっきりした顔で「頑張ります!」と言って、帰っていってくれています。話の聞き役になるだけでも違うみたいです。

今年の看護部の目標に入れているのが「あいさつ・お褒めの言葉・感謝の言葉のシャワーをかけましょう」です。それは師長たちや現場に言うのですが、褒められたり、感謝の気持ちを伝えられれば頑張ろうかなと思いますよね。学級崩壊についてテレビで特集されていたのですが、それはみんなで褒めていくことで、学級崩壊がなくなっていったという内容でした。病棟が崩壊しているわけではありませんが、褒めることで自信もつくし、成長していく姿が見えたので、大人になっても褒められることは嬉しいですよね。たくさん褒めれば、叱っても相手に受け入れてもらえますし、褒めないと叱った時に理解してもらえないですし、反発にも繋がるのかなと思います。

仕事のやりがいについて

今は管理職に就いていますので、師長さんがしっかりと病棟を管理してくれていたり、病棟のことについて新しい発想や意見を言ってもらうと、頑張っているなと思い、嬉しくなります。もちろん単独で動くのではないので、なにかする際には師長さんから相談されたりしますが、その結果、こう動きますというように言われると、これから変わっていくかなと思います。マンネリ化するよりは、新しい発想で動き出せばいいのかなと思います。
ベテランの師長さんには「やっぱり流石だな~!マネできないな~。」と感心することもありますし、役職になって間もない師長が成長していく中で、ある程度自分でできるようになってきたのを見ると「自信がついてきたのかな?」と感じます。もちろん私たちの指示も確認して動くのですが、その中でも自分の裁量で動ける所が分かって動くことは、師長さんたちにとってもやりがいに繋がると思います。そういった師長さんの頑張りを見ていると嬉しいです。
その他には、収入に関して加算がとれれば「やった!」と思います。維持するのはまた大変なんですけどね。

看護師のキャリアプランについて

当院は認定看護師の研修を受ける時に、病院が全面的にバックアップをしてくれます。休職ではなく給料を頂きながら、研修費も援助して貰ったりと幸せな環境で研修に行くことが出来ますので、それについての情報を伝えています。また、部署によって受けられる研修というのがあるのですが、それについての情報提供もしています。
あとは、病院の中でクリニカルラダーがあるのですが、看護協会が新しいものを出したので、今年度は自分たちの中でなんとか取り入れて、来年度は看護協会に則ったクリニカルラダーを、段階を追ってみんなに浸透していけるようにしたいなと思っています。

自分自身はキャリアプランを考えてというよりも、タイミングで役職になっていった感じで、私自身は臨床が好きです。大学病院で担当していたCCUでは、急性期で重症な患者さんを看護していました。患者さんは少人数で、患者さんお一人に深く入っていけるところで5年間勤務させて頂いたので、治療と看護については自分でも勉強しましたし、頑張りました。臨床が好きだったのですが、その後トントンと主任、師長、副部長となっていったので、本当に申し訳ないですが、なりたくてなったという訳ではなく、レールに乗ってしまったかなという感じはあります。ただ、与えられた仕事というのはやり遂げなければいけないというのはありますし、部長になった時にはスタッフ全員のことがかかってきているので、「頑張らなきゃ」というのはあります。現場にいる時には、何か改善したいという不都合なものが出てきた時には、当時の上司もみんなやらせてくれるような上司だったので、恵まれていたんですね、きっと。現場の師長さん方にもスタッフにも、どんどんやりたいことや発想があった時には、止めるのではなくてやらせてあげられれば、きっとやりがいにもなるんでしょうね。

面接などで学生に質問すること

必ず聞くのは、ありきたりですが「看護職を目指したきっかけは何ですか」ということですね。まだ学生さんなので、沢山の看護の経験はないと思いますが、「看護で大切にしていることはありますか」「実習の中で一番印象に残った患者さんはどういう方で、どんな風に援助しましたか」ということは確認させてもらっています。
その他には、「病院側に聞きたいことはないですか」を聞かせてもらっています。学生さんからは「配属されるとしたらどこになりますか」を聞く方もおいでれば、「この病院は、自分の希望した部署に配属は叶いますか」と聞く方もいます。今の学生さんは結構現実的ですね。
ご家庭のある学生さんもいるので、看護師は夜勤をする職業で、24時間患者さんの側で看護が出来るのが看護師なので、「夜勤に対して抵抗はないですか」と確認します。また、「急性期と慢性期と、どちらを希望しますか。」ということも聞きます。やはり、急性期で頑張れる子と、治療面よりも患者さんのケアを中心とした業務が合っている子がいるので、面接しながら確認します。年度によって、「慢性期がいい」「急性期がいい」と重なってしまう年もありますね。

学生へのアドバイス

看護職は専門職なので、看護師になる前はもちろん、なってからも常に学習する姿勢は持ってくださいというのはあります。キャリアアップの面もありますが、私たちの周りには患者さんがいて、古い知識でかかわっていてもだめなので、常に学習して欲しいし、看護職であるということに自分で自信をつけて欲しいなと思います。専門職は資格をとったきりでは困りますので、そこはしっかり勉強してくださいというのは講義のなかでも伝えています。
ただ、厳しいことばかり言っていても耐えられないので、部署配置された時に、自分が目指す先輩や、あこがれの先輩の後姿を見てついて行こうと思う人を見つけて欲しいという話はするんです。人間関係の中で、やはりつらい事もありますし、理にかなわないと落ち込むこともあると思うんです。その中で、目指す人を見つけることによって、辛い時も「あの先輩に相談しよう」ということになりますし、「先輩がそういう看護をしているなら、私もそういう看護をしよう」という希望にもなります。あの看護師さんみたいになりたいなと思える人を、見つけてくださいと伝えています。
私自身もそういう先輩がいました。就職してすぐの頃で、12歳も歳は離れていましたが、いろんな面ですごいな~と思う先輩で。看護や治療という面は自分で学ぶのですが、「次の人が仕事をする時に、仕事をしやすい環境をちゃんと作りなさい」と指導されたのもその方でした。「あなたの仕事のあとは、くちゃくちゃでやだ!」と言われたりして。「ちゃんと次の人が引き継ぐ時の事を考えなさい。それも患者さんの環境だから、患者さんの部屋をよごすんじゃないよ。」と指導してくださいました。CCUは少人数だったので、誰にでも相談できるような環境ではあったのですが、その先輩にいろいろな相談などもさせてもらっていましたね。

今、担当師長が新人さんとの面接をしてくれていて、「怖い先輩がいる」「この先輩とは話しにくい」ということがあります。怖いから「あの人嫌だ」という風に敬遠しているという話が出てくると、それが指導の厳しさなのか何なのかということは理解してもらわなければいけないと思います。言われる口調や、否定されるとどうしても敬遠しがちにはなるのですが。憎くて言っているのか、育てようと思って言っているのかは全く違うのです。そこは新人さんが分からないこともあるでしょうから、周りの人が「育てようと思って言っているんだよ」と一言かけてあげるしかないと思うんですよね。指導も、相手である新人さんに伝わらないとただの怒りんぼうにしか映らないので、そこを相手がわかるようにどうするかというのは師長に助言してもらいます。

看護部長になる前について

まず看護師を目指したきっかけですが、私のいとこに看護師がいたんですね。そこで看護師という職業自体は自分にとって遠い仕事ではなく、身近な仕事というイメージではありました。それと、ものづくりや事務をするというのは自分には合わないかなと、いろいろな職業を削除していって。改めて看護というものを考えた時に、誰かのお世話をしながら喜んでもらえる仕事なんだなと感じ、中学生の時にイメージしたことがあったんです。誰かのために何かをするというのは、職業を決める上で自分の軸ではありました。高校生になって最終的に進学を考える時に、やっぱり看護師と思い、いとこの看護師が頑張っている姿を見ていたので、私の中ですっと入ってきました。

看護師になってから配属されたCCUで、とんでもないことをしているんです、私。これは新人さんたちにも伝えることがある話なのですが。CCUは心臓を患っている患者さんが入るので、必ず心電図モニターが付いているんですね。心電図モニターが付いていると波形が出たり、数字をキャッチしたりできます。患者さんのバイタルを計測する時には血圧計で測ったり、脈を手でとったりして、本当に数字と誤差がないかということが基本になります。解離性動脈瘤を持っていて、血圧をコントロールしなければいけない患者さんを担当した時のことです。1時間ごとに測ってくださいという指示がありまして、夜中の患者さんが寝ているときも測るのですが、患者さんが起きちゃいますよね。起こすたびに患者さんに怒られて。
そこでもう一つやってしまったことが、患者さんに「うるさい。寝られないじゃないか」と言われていたので、脈は心電図波形の数値で見ていたんです。ただ心電図波形はダブルカウントといって、60の脈であっても120でキャッチする時があって、新人で夜勤2回目くらいの私はそれがダブルカウントという認識ではなくて、倍にマーキングしてしまって。患者さんが横を向いている時にダブルカウントしていたんですけど、それをそのまま申し送りした時に、先輩が見て「これはどんな風に測ったの?」と言われて。私も実測していないし、モニターの見方も完璧ではなかったので、ダブルカウントをしていたということを指導されました。私の中では「二度とするまい」と思った出来事でした。
あとは、ある患者さんが繰り返し入院をしてきた時に、顔を覚えてもらって声をかけてくださった時は、嬉しかったです。新人看護師が少し仕事ができるようになったなと思っていただいたようでした。新人の頃に思うようにできなくて、注意された患者さんから、次にあった時には「成長したね」と評価されたりすると嬉しかったです。そこの病院の看護師であると覚えてもらったり、名前を覚えてくださる患者さんも沢山おいでて、やはり名前で呼んでもらえると本当にありがたいですよね。病棟が変わっても「前はあの病棟にいたよね」と言ってもらえると、嬉しいものです。

好きな言葉・座右の銘

「感謝する」「感謝の気持ちを忘れない」ということは大切にしていますね。人の「あれっ」と思う部分に目を向けるのではなく、いいところやすごいと思うところを見ていきたいというのはありますね。どちらかというと人を嫌いにならない性格なので、今までも人を嫌いという感覚はあまりないんです。ただ、相手の反応を見た時に、相手が気持ちよくいてほしいし、不快な思いをしないように対応したいなと思います。傷つけたくないという思いはありますし、自分も傷ついたというのもそんなにないですね。人と接する上では優しくしたいです。

休日について

家では最悪だと思いますよ(笑)。子どもが3人いて、家にいるのは1人だけなので、休日はかまっていないのですが。仕事への比重が今は大きくて、家では最低限の家事だけして、疲れてぐったりしています。
平日に休みがあたると、映画を見に行きますね。特に水曜日になると、映画を見に行かなきゃいけないと思って(笑)。ミステリーやファンタジーなど、ジャンルはそんなに問わないです。子どもたちと一緒の時は学園ものも観たりして、一緒に「キャー!」といって青春を楽しむ時もありますね。映画は入り込んで観ていて、その空間を楽しんでいるので、本当にストレス発散になって心が解き放たれるような感じになります。ON・OFFはしっかりつけていて、今は家で仕事をすることはないです。

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