公立穴水総合病院

川尻 幸子さん 【お名前】 川尻 幸子さん
【病院名】 公立穴水総合病院  【役職名】 院長補佐兼総看護師長
【これまでのご経験】
看護学校卒業→県外の国立病院→公立穴水総合病院(外科・内科・産科・眼科の外科・透析センターなど)
※取材日…2017年1月
 

総看護師長のお仕事について

朝は7時30分までに出勤し、夜の状況の把握やメール確認をします。その後、8時15分から師長が全員集まって、朝のミーティングを10分程度行っています。病棟や他部署の夜間の変化や、情報共有しなければいけないこと、今日の予定を再確認します。あとは病床管理ですね。100床しかないので、どの病棟に今日何床あって、何人入院予定があるか等を、皆で確認しています。
ミーティングが終わった後は、事務局長や院長と話します。院長は朝や外来が終わった時など、1日2回はここに顔を出してくださるので、その時に報告や相談をしています。院長先生は身軽な方で全館回られるので、いろんな部署のことをすごく把握されています。事務局長や院長先生とも距離が近く、細かく情報交換できているので、そこがいいのかなと思います。

その他に、病棟のラウンドをし、外来がすごく忙しいという日はたまに処置室に応援に行くこともあります。
17時からの終礼では、その日にあった出来事などをすぐに共有してもらっています。やはりすぐに共有しないと、溜めてしまって伝えるのを忘れてしまいますし、皆にはタイムリーに把握してほしいと思っています。

看護部の総師長なので、その仕事がほとんどですが、診療部・薬剤部・放射線部・臨床検査部・リハビリなども私の管轄となっており、他の部署とどうしたらうまく連携できるかについて考えています。この病院は小規模で専門職の数も少ないので、少しずつ助け合っていきたいと思っていますし、今年度からは他部署の目標管理も共有しています。それには、まず部署の中で目標管理についてきちんと話し合い、各所属長が目標管理を共有します。年度の終わりに他部署と一緒に成果や課題を発表し、「自分たちがやれること」「他の部署が手伝えること」等の情報を共有し、お互いに協力できるようにする予定です。そういった取り組みで、一遍には変わらないかもしれませんが、少しずつ意識が変わり、その力に少しでもなれればと思っています。

仕事のやりがいについて

研修に行くチャンスに恵まれ、認定看護管理者のファーストレベル研修に行った頃から、「こんなことも勉強していなかったな」と、いろんなことに気付いたんです。研修で周りの人を見ていたら、自分がすごく時代から遅れている感じがしたんですね。それから研修が段々楽しくなってきて、「病院に帰ったら、あれもこれもやりたい」と感じた気持ちが、今でも印象に残っています。自分が今まで持っていなかった視点に、その時目覚めたというか、衝撃的だったというか。それで、他の方たちにも、どんどんこういう勉強をしてもらって、そういう人たちが増えたら、病院はまだまだ変わる余地があるのかなと思い、ワクワクしました。

毎月、主任と各師長と私で二者会という会を開いていて、今の部署の課題や今後やりたい事などについて話し合いをするんですね。その後に話し合った課題を部署会に持ち帰り、部署の皆さんと話をしてもらうのですが、今までのやり方を変えなければいけないことが沢山でてくるので、業務改善が必要になります。その課題を皆で考え、意見を出し合えるというのが一番いいのかなと思います。実際に部署のスタッフ全員で課題を改善できるようになり、皆が変わってきたかなと思いますね。例えば、二交代制を導入する時にも業務改善が必要になりました。そこで、導入のためにスケジュールや細かい業務について、病棟のスタッフ全員で話し合って決めているなというのが、見ていてすごく嬉しくて。今までは言われたからやるという感じだったのが、自分たちで決めて変えていけるという風になってきて、皆で一生懸命業務改善していってくれていることが嬉しかったですね。

自分が師長になった時は、看護部全体を動かせる立場ではなかなかなくて、やっぱりトップにならないと組織を動かすのは難しいなというのは思いました。総看護師長になった年は、右も左も分からずにその日のことをこなしていたと思いますが、いろんなことが少しずつ分かってきたら、やりたいことがどんどん浮かんできて、自分が描いたように変わっていくと、すごく嬉しく感じます。やりたいことを院長に相談し、「じゃあそれをやってみて」と言われることにも、すごくやりがいを感じます。そして、こういう気持ちを他のスタッフにも感じてほしい、味わってほしいと考えています。「皆がやりがいを持って楽しく働ける」、それが一番大事なことなのかなと思います。そこ到達するまでが、大変なのかなって。看護師になってからやりがいが見つかるまでのその間を、うまくサポートして導いていけたらなと思っています。いろんなことを経験すると、自分がやりたいことが明確になっているので、この研修に行きたいという希望は出してきてくれますね。

看護師のキャリアプランについて

今の新人には、研修計画がきっちり立てられているので、それを忠実にやっていくと、どんどんステップアップするチャンスはあるんじゃないかなと思います。穴水式ですが、PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)を取り入れており、新人が早くベッドサイドにいけるように、また看護師が患者さんのことをそばでよく見られるようにと取り組んでいます。ナースステーションに戻って、患者さんのことを思い出しながら看護を記録するのは本当の看護じゃないと思うんです。看護の楽しさや仕事のやりがいを見つける時には、患者さんをよく観察したりお話したりして、「患者さんにもっとこんなことをしてあげたい」と、それぞれ受け持ちの看護師が思ってもらえればいいなと考えています。そこで、患者さんのことをベッドサイドで見ながら記録することを、常々指導してもらっています。

今は新人を指導している指導者が月に1回集まって、「この新人はここまで出来ていて、これでつまずいている」とか「この新人はこれとこれはクリアしたけど、この課題が残っているから、もしその課題が解決できるチャンスがあったら、チャンスを与えてあげてね」というようなことをプリセプター会議で情報共有しています。新人と2年目の看護師の進捗状況や悩んでいることなどを皆で共有しています。共有すれば、同じ部署の他の看護師がサポートしたり、病棟師長と私が把握しておけば声をかけたり、サポートができると思います。最初は指導する方も慣れていなかったのですが、地域の修学資金を受けて、毎年新人が入職することで、教える方も育っていますし、本当にいい方向に変わってきていると思います。やっぱり新人が入ってこないと、他のスタッフも育たないですからね。教える方も勉強しなければいけませんし、変わっていく医療にもついていかないといけないですし。
私たちが学生の頃には地域看護学や老年看護学、訪問看護学などのカリキュラムがない時代でした。高齢化が進んで、特にこの能登北部は高齢化率も40%以上の地域ばかりですが、今の学生は学校で地域看護学や認知症のことなども勉強してきて、地域の看護に関心のある方も多いです。この地域で将来、そういう方たちが中心となってこの病院を変えていってくれるのかなと思って、期待しています。

大きな大学病院のように、専門分野の看護師をたくさん育成することがなかなか出来ないことが課題ですが、本来は現場で5年くらい経験を積んだら、認定看護師を目指したりする道があるので、自分がやりたい分野の認定看護師になるのもいいですね。
今、師長会で私たちが課題としているのは、次の管理者の育成と専門分野の看護師の育成です。専門分野の看護師を育成する時には、受験もそうですが、一定の期間出張に出ないといけませんし、長い間この病院を離れることが大変です。今は県内で認定看護師の資格ががとれるようになってきているので、そういうチャンスをどんどん活かしてもらいたいと思っており、専門分野に進んでもらって、後輩の指導にあたってもらえたら嬉しいなと思います。
私は若い時から管理者への道を明確に考えてはいませんでしたが、主任になり師長になった時に、管理者はスタッフとは違ったやりがいがあるなと思いました。たまたまそういうチャンスもあったので、今こういう立場にいますけど、やりがいがあります。大変なこともありますが、管理者を目指す人が増えてきたら嬉しいです。

子育てと仕事の両立という面では、その人の希望に合わせて、時短で働いてもらうなどしています。皆が少しでも働きやすいように、仕事が続けられるような環境にしないといけないと思います。
私が就職した頃は50歳で定年だったんです。今考えると50歳なんて若いですよね。それから少しずつ伸びて、現在は60歳になっていますが、皆さん定年になっても結構働いてくださっています。この地域では、60歳の定年で辞められると大事な人材がいなくなってしまうので、少しでも継続して働いてもらいたいと思っています。

面接などで学生に質問すること

「この病院を選んでくれた理由」を聞いています。学生さんも就職する時と就職してからで、気持ちがどんどん変わっていくとは思うのですが、「ずっと穴水で頑張っていけるのかどうか」もお聞きしたりします。ほとんどの方は、住んでもいいなとおっしゃいます。

学生へのアドバイス

私たちの目から見ると、今の学生さんは手厚く指導をされていると思うんですね。そういうチャンスを活かして、ステップアップしてもらいたいなと思います。世代間の違いがあり、難しいなと思うこともありますね。でも、自分なりにやりがいを見つけて頑張っている方もいらっしゃいますし、それぞれのペースにあわせて少しずつですかね。
人によって看護師を目指す動機は違うと思うのですが、「こういう理由で看護師になりたいんだ」という明確な目標を掲げている方は一生懸命やっていると思いますね。「患者さんに喜んでもらった時に嬉しかった」「やりがいを感じた」という人には夢を叶えてもらいたいし、そういう明確なものがなかった方にも、看護師のやりがいやいいところを教えてあげたいです。

総看護師長になる前について

自分が高校生の時には、保育士や栄養士の道へ進学する人が多かったですが、私はそういう職業は向かないかなと。事務系の仕事も、自分には向いていないと思っていました。家族が病院へ入院した時に看護師さんを見てとか、家族に看護師がいたからというような動機はありませんが、看護師の仕事はすごくやりがいのある仕事に思えて、それでやってみたいなと思いました。

看護学校に入って実習に行った時のことです。外科の病棟で4週間の研修がありました。食道がんの患者さんを手術の前後でみさせていただいて、その方が良くなって退院された時に、その患者さんが私に世話になったということで感謝されたんです。学生なので全然大したことはできなかったのですが、その時に、「あー、こうやって看護師って患者さんに喜ばれたら、また次の患者さんもこうしてあげたいなという気持ちになるんだな」と思いました。いいスタッフの方にも指導していただいて、その実習をした病院にも「こういう看護師になりたいな」と目標になるような看護師の方もいらっしゃいました。なかなか厳しい方もいて、実習がいやだなと思うこともありましたが、やりがいの気持ちが強かったですね。また、産科で初めてお産を見て感動したことや、眼科の実習に行った時に学生にすごく丁寧に教えてくださった先生のことをすごく覚えています。これらの経験はすごく覚えていますね。その他のことはほとんど覚えていないんですけど(笑)。実習で患者さんと直接かかわることで、何か学生にいいきっかけが起これば、将来こうやって頑張っていきたいと思えるのかなと思います。

1年県外の病院で働いて、結婚と同時に石川県に戻って、この病院で働きはじめました。それから37年くらいになりますかね、ずっとここに勤めています。私が勤めはじめた頃は小さな病院だったのですが、その後に新病院ができ、177床の病院になりました。何事も目新しく、色んなことをやりたくてしょうがなかった覚えがあります。あれもこれも勉強したいと思っていました。今みたいに指導体制が整っている時代ではなかったですが、いろんなことを体験するのが楽しく、自分の糧になっていくのを感じていました。

最初に師長になった時は、透析センターの配属でした。透析というところは初めてだったので、慣れるまで大変でした。今考えると、これぐらいの規模の病院だと、病棟のことしか知らないよりも、透析のことや特殊な分野のことも分かっている方が、すごくよかったなと思います。能登地震みたいな大きな災害が起きたり、数年前に大きな事故で何人も救急搬送されたこともありますし、そういったことに対応できるように誰でも応援できるようにならないとだめなのかなと思います。

好きな言葉・座右の銘

若い時は誰のこの言葉がいいとか、いろいろあったのですが、今は「思いやり」だと思います。皆に何をもって仕事をしてほしいかと思ったら、患者さんに対してはもちろん、同僚やどんなスタッフに対しても、お互いにそういう気持ちがないと続けていけないんですよね。最後はその気持ちが大事だと、自分が管理職になって、すごく思うようになりました。若い時は自分がやりたいことに突っ走ることがあると思うのですが、「今、その一言、相手のことを考えて言ってもらいたいな」と思うことがあります。仕事が忙しいと言葉も厳しくなったりするのですが、そんな時こそ思いやりをもってと思います。

休日について

普段の生活と離れて気分転換をしたいなと思うので、なかなか行けないのですが一泊の旅行や温泉に入ったり、いつもと全然違うことをすることは好きですね。ただ、研修があったりと土日続けて休みがあることは少ないので、桜の時期に花見に行ったり、もみじの時期には紅葉を見に行ったり、それで気分転換を図ると、また頑張ろう!という気持ちになれます。
連休の一日が研修になってしまった時は、次の一日は家のことをして終わっちゃいますかね。朝から掃除洗濯をしていると、半日くらいすぐに終わってしまうので、後の半日は休んでいたいなとなって、日曜日何もせずに終わったなということもあります。たまに連休で孫の顔を見に行く時もあります。県内にいるので、土曜日に行って泊まったりと。息子は仕事でいませんけど、お嫁さんと孫と一緒に買い物に行ったり食事に行ったりするのが、気分転換ですかね。

このページのトップへ