【お名前】 山中 由貴子さん
【病院名】 公立羽咋病院 【役職名】 総看護師長
【これまでのご経験】
看護学校卒業→大学病院3年(小児科・小児外科)→公立羽咋病院(小児科・羽咋市役所の保健師等)
※取材日…2017年3月
総看護師長のお仕事について
自施設のような小さい病院なりのいいところがあると思うので、自分の病院だからこそできるようなやり方で、私はそれを強みにしてやろうと思っています。例えば、ベッドコントロールがそうです。それはなぜかと言うと、病棟業務量が決まるスタートがベッドコントロールであり、また混合病棟ではありますが、皆のモチベーションを保つ為に、内科以外の「自分の部署はこの科を任せて」というように編成しており、内科でも循環器、代謝、腎内に分け専門性を高めてほしいと願っています。
内科の外来には「トリアージ(治療や搬送の優先順位を決めること)をしてますか?」と常々言っています。自分でしっかり考え、判断して、先の事を予測することが大切と伝えています。私は、とにかく現場主義ですね。現場のことがわからないと改善には結びつかないので、何か報告があったとして、私もそれがどうなっているのか見に行きます。自分の目で見ないと気が済まないのです(笑)。もし見に行って、自分と考えが違うなと思ったら、担当者とディスカッションします。それはこの規模だからこそできることなので、ありがたいなと思います。
ラウンドの後は、私の机に山盛りになっている日誌を整理し、電子カルテに記載されている入院予定の確認や総務関係の確認をします。その他に、県内の高校を訪問し、学生の進路状況やチーム医療に必要な薬剤師などの職種についても目指している生徒さんがいないかお伺いしたり、病院奨学金のご案内をしたりします。
仕事のやりがいについて
地域包括ケア病棟も、県内の自治体病院としては一番だったのですが、その中で「訪問看護に行きたい」という声がありました。いいなと思い、その体制を整えなければと言いながら、ずるずる引っ張って構想を練っていたのです。すると、平成28年退院後訪問指導という診療報酬が付き、皆のことを後押しできるということで、選抜メンバーが行くことになり、マニュアルを作成。
その後、スタッフが患者選定の方法を考え、地域包括ケア病棟のスタッフが急性期病棟のカンファレンスに参加し、事前に訪問が必要な患者さんをチェックするようになりました。それは私が予想していなかったような発展で、やってよかったなと思いました。
訪問は患者さんの家に上がることになります。私は保健師として患者さんの家へ訪問する経験があったので、会議室に畳のコーナーを作って選抜メンバーと研修を行いました。最初に、「看護師はなぜ非常識か?」というところから始めました(笑)。看護師は接客の教育を受けていないので、非常識なのですよということから話し、靴の脱ぎ方、畳の上がり方、座布団の座り方、お伺いする時にコートは脱いでおくなどの教育をしました。
「質問は?」と言った時に、ある看護師から「スイカを車に積んでおいたから持って行って、と患者さんに言われた場合、どうしたらいいですか?」と質問がありました(笑)。一番迷うような事例を出してきたのですよ(笑)。それで、「スイカは車から降ろして、お返ししてくださいね。」と伝えました。なぜなら、高齢者の方はとにかく気を遣われるのですよ。一回受け取ってしまったら、次も次も…となります。だから、お茶だけいただいてください、と。そんなことがありましたね。種は蒔くのですが、その種が芽になって、私が予想していたよりもスタッフが発展させて花が咲くという、それが私のやりがいかもしれません。
看護師のキャリアプランについて
看護協会から出たコンピテンシーは指標になると思いました。とくにベテランナースのモチベーションをなんとか上げたいと思い、ラダー昇格をさせなければと思いました。しかし、ラダー昇格が上手くいかず、悩んでいた時に、副院長からインセンティブをつけてみては、というアドバイスを貰いました。コンピテンシーはそのまま自施設の求める看護師像で、どんどん申請してくださいと説明し、過去2年間で7人が昇格しました。
元々看護師にとって、勤務異動ひとつにしてもキャリアを積むことだと思うのです。看護師の仕事は基本的に、患者さんの診療の補助と日常生活の援助ですので、この科じゃないとだめっていうのはないと思います。ナースにはいろんな経験をして欲しいですし、自分も経験上、最初は嫌だなと思って配属されたところでも楽しかった経験があるので、経験は宝かなと思います。いろんな科を経験し、その経験を活かして次のところに役立ててほしいですね。希望者は積極的に昇格試験を受験したり、認定看護師を目指してほしいと思いますが、宝の持ち腐れにしないで、患者さんのケアに役立て、組織に貢献してほしいと言っています。
これからは再任用の方がどんどん出てくるので、経験豊かなナースをどのように活躍していただくかを検討していくのかが直近の課題でもあります。
面接などで学生に質問すること
もし羽咋病院を訪ねてくれたら、「どうしてうちの病院を選んだのか」ということは聞きますし、「どんな看護師になりたいですか」ということを聞きます。自分の言葉で話を聞きたいなと思います。上手く流暢に話せなくても、想いって伝わりますよね。その想いを感じて、応援したくなりますね。
学生へのアドバイス
将来、医療にもAIがもっともっと進出してくると考えられるので、私たちの仕事のあり方を考えましょうという話をしています。ある師長がAIについて話しました。「昨日テレビでやっていたのですが、AIで賄える仕事として、もうすでにドクターが入りました。検査データや症状で、患者さんが何の病気の疑いがあるかAIが診断できるということで。今のところナースは入っていなかったけど、うちの看護部理念のようにやらないと、看護師だってAIになりますよね。」という話をされました。私たち看護師は何をする人ぞ、ということが永遠の課題になります。
これから看護師になる人にはまず、すごくいい仕事ですよと伝えたいです。人とふれあって、自分の考え方をそのまま伝えられます。患者さんの痛みを感じて考えて状況によって判断して対応できるというのが、AIとの大きな違いだと思います。
学生時代と公立羽咋病院に入る前について
看護学校を卒業した後に専攻科に1年間行き、保健師の資格も同時に取りました。卒業してからは、大学病院の小児科・小児外科病棟で3年間勤務しました。そこには全国から患者さんが集まり、患者さんの看護はもちろん、お母さんのケアも経験しました。その頃の経験で、患者さんはもちろん、家族全体を看護することの大切さを知りました。
総看護師長になる前について
人事交流を終え、2003年にできた医療サービス推進室という部署に配属されました。一般的に言う、地域連携室で、全国にもそういう部署があまりなかった頃でした。退院支援を担当することになりましたが、まだ退院支援も全国的に活発でなかった頃だったので、まず中央研修に行きました。
自分は何をしようかなと思った時に、リハビリのスタッフ、医師、MSWが患者さんにバラバラにアプローチしていることに気づいて、私の仕事はこれだ!と思いました。そこで、退院支援に向けて、プロジェクトチームを立ち上げ、何がどこまでやれているかが他職種間で共有できるように、時間軸と退院支援の内容を整理し、退院までのシステム表を作りました。今もそのシステムを運用していて、受け継いだナースがバージョンアップしてくれています。
次に病診連携の担当になりました。そこで、どうやって患者さんの情報を伝達するかを医師に提言し、開業医の先生に、紹介された患者さんの情報をお伝えしていました。病院と地域のパイプ役ですね。そういう特殊な経験はいろいろあるのですが、病棟の師長経験はないのです。
好きな言葉・座右の銘
休日について
仕事関係のことでは、認定看護管理者のサードレベルの試験を5月にひかえているので、一緒に受験するメンバーと集まって受験勉強をしています。
一番好きなのは、映画を見ることです。ジャンルはなんでも見ます。フランス映画では映画の中の街並みや調度品を見るのも好きです。異国の雰囲気を見るのがいいですね。
その他はライブに行ったりもします。以前はサザンオールスターズ、最近はKinKi Kidsや嵐とかいろいろ行っていますね。移動中もKinKi Kidsをよく聞いています。仕事で頑張って、自分へのご褒美として東京へライブに出かけています。この間は、ライブの時間を待つ間に、東京ドームホテルで4時間勉強して(笑)。自分の中では、そういうメリハリがいいですね。スケジュールの都合で行けない時は、スタッフからライブのおみやげをいただいて、それは宝物です。
・公立羽咋病院