南ヶ丘病院

産形 洋子さん 【お名前】 産形 洋子さん
【病院名】 南ヶ丘病院
【役職名】 副院長 兼 看護部長 兼 在宅部門部長
【これまでのご経験】
学校卒業→石川県内外の病院・クリニックで勤務→南ヶ丘病院(急性期・慢性期・在宅・訪問看護・ケアマネージャー等)
看護部長歴9年目。
※取材日…2017年6月
 

看護部長のお仕事について

「患者さんのためにいい看護を追求すること」は当然ですし、民間病院なので「経営を維持すること」は重要です。また、現場の看護師に、生き生き・のびのびと働いてもらうために考えることも大事です。スタッフがいい看護を提供するには、物品の充実やきちんとした指導、仕事の評価として賃金を支払うことが必要であり、それらを実現するには経営を維持しなければいけないので、経営について常に考えています。
いつも心掛けているのは、病院・組織全体を鷹の目で見ることです。何か問題があったとして、「看護部のことだから、私の部署のことだから対応する」というのではなく、組織全体が上手く運営されるような考え方や視点を持つことが大事です。そのため、組織全体を考えた働きかけや、そういう視点を持った管理者の育成が私の仕事かなと思います。

日頃の業務は朝のベッドコントロールから始まり、どれくらい空床があるかを確認します。そして毎朝、各ドクターと各部門の責任者で打ち合わせをします。その打ち合わせでは、昨日の入退院と今日の予定、夜間起きたことや現在の空床等を共有し、何か変わったことがあればその場で解決するようにしています。
介護・在宅ケア部門の責任者もしているので、お昼はヘルパーステーションでヘルパーさんと一緒に食事をします。その時に利用者さんの家から戻ってきたヘルパーさんからの情報を聞き、何かあれば利用者さんの電話対応をします。午後になったら病院に戻り、会議に出席します。

また、病院外では、県の委託で他の病院へ新人看護師の教育のアドバイザーをしていますし、看護協会の依頼では介護保険の判定委員や認定看護管理者のファーストの講師等をしています。また、数年前には働きやすい職場づくりのためのアドバイザーとして、年休のとり方等について現場の意見を聞いて、その病院でできることを見極めながらアドバイスをしていました。

仕事のやりがいについて

自己満足かもしれませんが、困ったことがあったら、私のところに皆が頼ってきてくれることがやりがいでしょうか。問題があったら、常に解決しなきゃというのが頭にあるんです。問題を放っておくことができないのです。そうして問題を解決して喜ばれるのもやりがいですね。

日々大切にしているのは、「人としてどう行動するべきか。今、何をしてあげたら喜ばれるか。」で、そのことを日頃スタッフに伝えています。例えば、この病院の別館でリハビリを受けた患者さんが外を通って本館に来る時、スタッフが休憩中だとしても雨が降っていたら「傘を持ってきましょうか」と患者さんにお声掛けするのが、人として心がある行動です。いくら仕事上で患者さんにきちんとした看護を提供していたとしても、仕事ではない時に人としての気持ちが提供できなかったらだめだと思います。
また、患者さんについて、最初から専門外なのでみないというのではなく、まずは「どうしたらこの患者さんにいい状態で療養環境を提供できるか」を考えることが大切だと思います。大変な患者さんを受け入れる時も、「うちで受け入れるには難しいな」と思うのではなく「難しい患者さんだからこそ、この病院でちゃんと療養していただくことができるんだ!」という気持ちになってほしいですね。どこの病院でも大変だと思うことが、この病院ではきちんとマネジメントできるということが、なによりも素晴らしいことだと思うのです。患者さんを受け入れるためにどうやって看護するかを、常に前向きに発想し工夫してくださいと、スタッフに伝えています。

看護師のキャリアプランについて

個人面談をしてみると、看護師は皆さん個々にスキルアップしたいという想いがあることがわかります。私もそうでしたが、うちの病院では勉強したいという看護師を全面的にサポートします。研修受講料の全額負担もそうですし、勉強に行っている期間の給与・ボーナスも保障します。勉強に行きたい人は沢山いるので、勉強に行くための基準をこれから決めなければいけないというのが現状です。今は師長たちが順番に認定看護管理者のファーストの勉強に行ってもらっています。
自分で手を挙げて外に勉強に行くことは、勇気のいることです。病院を留守にしなければいけないし、病院にお金を出してもらうことで試験に合格しなければいけないというプレッシャーもあります。自分が勉強に行った時は個人的な心配事があったので、もし自分で受講費用を出していたら挫折していたかもしれません。しかし、それだけ病院に保障してもらっていたので、きちんと最後までやり遂げなければいけないという責任感がありました。

私自身は、訪問看護指導者の研修や、事務長研修の通信教育を受けたり、石川県で2番目に認定看護管理者のサードの勉強に行ったりしました。
認定看護管理者の勉強に行った時、きている受講者の中には有名な病院の看護師や、本を書いているような看護師がいて、120床くらいの病院規模で受講しにきている看護師は私くらいでした。その時、私にはプライベートや仕事のことで心配なことがあり、講師・受講者みんなの前で泣いてしまったことがありました。それで講師に自分が今置かれている状況を説明し、とても卒業論文が書けるような状態ではないことを伝えると、「あなた当たり前じゃないの。例えば、上に向かって石を投げたら、そのままあなたの頭に当たるわよ。もし上に対して何かをしたいと考えるなら、まずは足元を見なさい。上に行くためには、まず足元の石をどかすことが必要よ。」と言われたのです。その一言で目が覚め、私の生き方が変わりました。問題があった時に、大きな問題を解決しようとするのではなく、一つ一つの小さな問題から解決すれば、景色が変わると。私にとって苦しい時に行った研修でしたが、今後の私の方向性を示唆していただいた貴重な時間でした。研修に行くまでは常に理想を考え、上を見て、「こうならなければいけない」と肩肘張って考えていましたが、それからは肩の力がスーッと抜けたようでした。それが、周りにいる人にとっても安心感を与えるんだろうなと思います。

学生へのアドバイス

物事を完璧にすることはしんどいことなので、自分が置かれている状況の中で、優先順位を見極める力を培っておいたほうがいいと思います。学生が看護師になるためには、まず国家試験に受かることがベースになります。看護実習に入ったら、毎日記録に追われるものです。家に帰って日々記録ばっかりに時間をとられて疲れてしまったら、最終目標である国家試験合格が掴めなくなり、元も子もなくなってしまいます。実習レポートをきちんとやることにどっぷり浸かる必要はないと思いますし、「今すべきことはなにか」の優先順位を決めておく必要があります。例えば、国家試験に受かることが重要だとしたら、実習レポートに明け暮れて国家試験の勉強ができていなかったら、何も意味がないですよね。いくらレポートで100点とっても国家試験に落ちては意味がありません。そのへんは、先生に嫌われず、追試を受けない、目立たない生活を送って国家試験に受かりなさい、と学生には言っています(笑)。そしてめいっぱい学生時代を謳歌すればいいですし、どんな看護師になろうかなというのは、なってから自ずと道は開けると思います。

看護部長になる前について

県内外の病院やクリニックを経て、南ヶ丘病院に入るきっかけになったのが看護部の理念でした。34、5年前にこれくらいの病院規模で理念があり、組織がきちんとしているというのは珍しいと思ったんです。理念がなく、それぞれの目的・目標が明確になっていない組織はだめだと思います。理念があるということは、病院の方向性が定まっているということなので、それがこの病院を選んだ理由です。人がいいというだけでは、組織は成り立たないと思います。
今までに仕事から離れている期間もあったのですが、その時に小学1年生だった子どもが「ママは仕事している時のほうがきれいだから、仕事すれば?」と言ってきたのです。その時に、子どもの目に映った私が無気力で、ぼーっとしていて、ハツラツとしていなかったんでしょうね。それでまた看護職に就きました。家庭も子育てももちろん大事ですが、仕事のやりがいというのは大事だなと思いました。

私は、この病院で在宅部門でケアマネージャーや、ヘルパーステーションでサービス提供責任者もしていました。そこで、ヘルパーさんがどうしたら夜から朝まで尿漏れしないかというおむつのあて方の勉強会をしているのを見たのです。私はその様子を見ていて、「おむつ一つとっても、ヘルパーさんはこんなに研究してやっているとは。うちの病院の看護師はこんなにしているかしら。」と思いました。そして、ヘルパーさんが日頃のケアをどういう風にしているのかを知るために、ヘルパーさんとともに利用者さんの元へ行きました。
入浴介助のために持ってきた服に着替え、利用者さんを抱えて湯船に入れているのを見た時、どれだけ大変なことかと思いましたし、自分も一緒に利用者さんの介助を行ってみて、「ヘルパーさんは凄い!」と改めて思いました。その時にお金のためということではなく、本当にお年寄りのお世話のためというプロとしての考え方を感じました。
また、ヘルパーさんが利用者さんのために作る食事というのは、利用者さんの家にある食材の中で作るのです。私は大根の皮をキンピラにするなんて思いもつかなかったのですが、ヘルパーさんは皮も無駄にしていませんでした。それは、ヘルパーさんが自分の家でそうしているからではなく、限られた食材の中で作ることを考え、ものすごく工夫していたのです。そうやって、心からこの仕事で利用者さんに喜んでもらいたいと思っている人が多いです。物品が揃っている中で仕事をしている病院の看護師と、いろんな工夫をしながら仕事をしている在宅部門のヘルパーさんはやっぱり違うなあと思いました。それまで長年看護師としてやってきましたが、そこで学んだことはすごく大きいです。
それから、もっとヘルパーさんの地位を上げたいと思うようになり、院内発表の方法を教えたり、休日の面では正社員ではなくても年休を使えるようにしたりと改善を進めました。

好きな言葉・座右の銘

座右の銘は「意志のあるところに道はある」です。意志があって初めて道が少しずつ開けてくるということを実際の体験から実感したので、もし今悩んでも何かやろうと思ったらやれると思います。自分の意志があればどういう結果になろうがやれるんだと、やりたいんだからやるんだと。
今は歳をとった焦りかもしれませんが、勉強すればもっともっと可能性がいっぱいあるのにと思うんです。今こうやって元気にしゃべって動けるうちに、やりたいことはやってみようと思うんです。試験に合格するというのは自分の成果や評価なので、そう思うとチャレンジしてみたいと思います。何事も知らないより、知っていた方が面白いかなと。

休日について

休日でも時間がもったいないから普段通り起きて行動をし、その後はぼーっとしているのが好きです。かつては畑をしたり庭に花を植えたりしていましたが、長続きはしていません。陶芸や機織り、茶道にアートフラワーにテニス等、あらゆることに手を出しました。機織りでタペストリーも作ってみたのですが、100均で売っているものの方がきれいでした(笑)。機織りを始めたのは看護師の友人の影響で、その方は個展を開くような腕前でした。その他にも、看護師だけど資格をとって美容師になってお店を開いた人もいたりと、人生の中でいろんな道を開く人が周りにいました。私もいろいろチャレンジして教室に通ってみたのですが、それが逆にストレスでした。「せっかく教室を紹介してくれたからいかなきゃ」と(笑)。いろんなことをした結果、あえて続いているのはパチンコです(笑)。

ある時に、アメリカでは自分たちで家のペンキを塗っているなと思い立ち、台所や冷蔵庫も塗りました。ペンキを塗ったら面白くて、この間は家のデッキをペンキで塗りました。ふすまや網戸も張り替えたこともありました。人にできることは、上手下手は別にして、自分でもできると思って行動しています。それこそ、意志のあるところに道はあるんです。行動派ですが趣味はないですね(笑)。

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