石川県済生会金沢病院

石川県済生会金沢病院  笠谷 亜紀さん 【お名前】 笠谷 亜紀さん
【病院名】 石川県済生会金沢病院
【役職名】 看護部長
【これまでのご経験】
県内の看護学校を卒業→石川県済生会金沢病院に入職。
急性期(内科・外科)をご経験。看護部長1年目。認定看護管理者、医療安全管理者養成研修修了、1級ラジオ体操指導士。
※取材日…2025年6月。  

看護部長のお仕事について

昨年は副看護部長を1年経て、今年の4月から看護部長に就任しました。毎日奮闘しています。看護学校を卒業してから、当院でずっと働いています。今回、生え抜きの看護部長第1号となりました。

看護部長のお仕事は5つあると考えています。
まず1つめは、「看護部の運営管理」です。看護職員の配置やシフト管理、業務改善など看護部全体の運営を統括します。
2つめは、「看護の質を担保する・向上する・安全を守ること」です。そのために、職員の指導や研修などのスキル向上を支援していくことが大事だと考えています。
3つめは、「病院経営」です。病院の経営に参画するというところでは、経営管理会議などに参加して、そこで看護部の意見を反映させるようにします。
4つめが「他部門との連携」です。他職種のスタッフと看護師が円滑に医療を提供できるように、橋渡しする役割があります。
最後に一番大事なのは、「患者さんやご家族の相談に応じ、最適な看護が提供できるよう調整すること」です。

ラウンドにはよく行きます。私は済生会金沢病院で生え抜きの看護部長ということもあり、スタッフとの関係性では距離感が近いと思います。
現場にいることが普通なのだと思います。そこでスタッフに声をかけたり、話したりということはあります。もうちょっと威厳ではないですが、何かあればいいのでしょうが(笑)。この立場になってから、「看護部長室に行ってもいいのかな?」という声が聞かれるので、なんだか寂しいなと感じます。そこで、自ら「会いに行ける看護部長」と言っており、看護部長室もオープンにしています。また、自分自身も見られているという緊張感を持っています。

仕事のやりがいについて

看護部長は責任が重い役職なのですが、やはり大きなやりがいがあると思います。特に人材育成は、看護師の成長を支え、その影響が患者さんのケアの質向上につながるのはとても価値のあることです。
そして、新人や若手看護師の成長を間近で見るのは大きな喜びです。育成を通じてチームワークが強化されることで、組織全体の活性化につながります。人材は、病院の柱となり、医療体制の構築に貢献します。個々のキャリア形成をサポートできるのも魅力だと思います。

看護師になろうと思ったきっかけ

子供の頃から看護師になりたいとは正直思っていませんでした。看護師は人の命を預かる責任ある仕事です。私の従妹が看護師で、高校生時代に仕事の話を聞いていて「看護師のお仕事はどうかな」と考え始めました。また、私の誕生日は5月12日なのです。看護の日で運命だと思いませんか(笑)。

※看護の日…近代看護を築いたフローレンス・ナイチンゲールの誕生日にちなみ、5月12日に制定されました。

ナイチンゲールの看護覚え書を読み、看護学校時代の授業でも「光やにおい、音など、患者さんに影響している様々な要素まで考えて働く素晴らしい職業だ」と本当に感動したのを覚えています。
ちょうど当院が、現在の場所に新築移転する年に入職しました。内科と外科の急性期病棟に所属し、副看護師長、看護師長を経験しました。令和5年に病棟を離れて、看護管理師長・外来エリアマネジャーを担った後に副看護部長を1年間経験し、令和7年4月に看護部長となりました。

看護師のキャリアプランについて

私は日々「必ず自分の言動を振り返る時には『看護職の倫理綱領』『患者さんの権利と責務』に立ち戻るように」とスタッフに伝えています。キャリア形成していく上でも大事なことで、看護師の道しるべになるようにと思っています。
当院の教育方針は「自律した看護師を育てます」。自律した看護師とは、「内省する」「対話する」「慮る(おもんぱかる)」「実践する」者です。その中で私の好きな言葉が「慮る」です。

私の一番大事にしている言葉が「思いやり」です。患者さん、そのご家族、一緒に働く職員、そして職員のご家族に対する思いやりに通じます。思いやりの心で誠実であれば、よい看護を提供できると思っているので、当院の職員には思いやりの精神からキャリアの形成を考えています。

また、看護師の希望や適性を見極めながら、キャリア形成を進めていきます。そして当院は済生会グループなので、済生会看護職員教育指針に則っています。済生会はなでしこが紋章になっており、済生会の看護師を「なでしこナース」と呼んでいます。

ご自身のキャリア形成について

私は先輩看護師が「どういう考え方で仕事をしてたのか」ということを自分なりに感じ、大事にしながら仕事に向き合っていました。そして先輩たちを見ていて、自分もいずれは副師長になり師長になるというイメージが不思議とありました。済生会グループの看護職員教育指針に則り、導いていただき、今は看護部長です。

個人的に取得した「ラジオ体操指導士」の資格

ラジオ体操指導士という資格があることを偶然知り、「職員の健康のために何かできるのではないか」「職員を元気にしたい」「仕事に活かせるかもしれない」と思い、2016年に1級の資格を取得しました。これまでに院内研修でのリフレッシュや地域に出向いての健康講座を行っています。

面接などで学生に質問すること

当院ではまず作文を書いてもらいます。テーマは「心に残った看護体験とそれが私の看護観に与えた影響」「患者中心の看護とは何か、私の実践から考える」です。
学生さんの感性や経験が知りたいと思っています。また、「自分が大切にしていること」を看護の現場で、「自分はどのように実践、貢献できる」かということを聞きます。これは、スタッフの面談でも聞きます。

学生へのアドバイス

患者さんのことを一生懸命に考え、向き合う時に自分の中で大切にしていることがあると思います。「安全」「信頼」など一人ひとりに大切にしていることはあるでしょう。私であったら「思いやり」です。看護の現場に出た時に、思い悩むこともあると思います。そんな時にこそ自分が大切にしていることを信念に持ち、実践してほしいと思っています。

コロナ禍・2024年1月の能登半島地震について

病院の中で私の好きな場所は、病棟から外を見渡せる所です。天気のよい日は山々がきれいに見えます。夏には花火も観ることができます。気持ちのゆとりを取り戻してくれる場所です。この場所からは、石川県産業展示館、いしかわ総合スポーツセンター、県庁あたりを見渡せます。
コロナ禍では、石川県産業展示館のPCRセンターに毎日のように通っていました。
能登の震災では、いしかわ総合スポーツセンターの1.5次避難所、石川県産業展示館へ物資搬送等の自衛隊ヘリコプターが往復しているのを業務にあたりながら毎日見ていました。
被災した職員の補完、被災した患者さんの受け入れのために全国済生会の看護師、医師、薬剤師、事務の多くの職員が長期間に渡り応援に来てくれました。その時は「本当に済生会ってすごいな」と思いました。当時は看護管理師長であり、全国からの応援看護師の配置部署や業務内容、勤務計画等をコーディネートしていました。

看護の仕事の喜びについて

患者さんに関心を持ち、患者さんの利益を考えることを大切にしてきました。また患者さんのご家族との関わりや仕事復帰等への支援も大事にしてきました。しかし、コロナ禍より面会制限が始まり、ご家族と医療者との関わりが希薄になったと感じています。
患者さんが退院できた時には喜びを感じます。退院後の通院のたびに患者さんもしくはご家族が会いに来てくれることにもっと喜びを感じます。私たちの看護が患者さんによい影響を与えていたのだなと確信できます。看護の醍醐味だと思います。

休日について

休日はじっとはしていないです(笑)。何かしようとします。娯楽といえば、演劇、美術館やライブに行ったりして楽しんでいます。自分が気になったものは、とりあえず行ってみるという感じです。また普段はお酒を飲まないのですが、美味しい食事と美味しいお酒を楽しむことも好きです。

子供の頃から好奇心旺盛だったと思います。両親からも「なんでそんなところに興味を持つの?」と言われていました。誰かがやらないことをやってみようとか、「これって自分に出来るかな」と思ったら、まずやってみようと思います。
マラソン大会やウォーキングイベント等、自分を試すことができるものには、とりあえずエントリーします。昨日の自分に負けたくないので、根性を磨くために(笑)。看護学生時代は厳しい寮生活だったので、そこから根性を意識するようになったのかもしれません。マラソンは辛いし、くじけそうになるのですが、私のことを知らない人たちが沿道で応援してくれている姿と声に感動してしまうのです。「なんて人間っていいのだろう」と気持ちを戻してもらえる感じがします。
やりたいことはいっぱいあります。「知見・世界を広げていきたい」と思っています。頭の片隅にはどうしても「自分の仕事や看護に活かせるのではないか」と自然と考えてしまいます。

好きな言葉

私は異業種の人たちの話を聞くことが好きです。医療・看護の世界だけでなく、知見を広げることに面白さを感じます。経営者の言葉に影響を受けることが多く、セミナーに行ったりもします。

経営難に陥っていたUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)を立て直した森岡毅さんの言葉のひとつに「だから、ビビっている君は素晴らしい!」という言葉があります。初めて経験することは皆「不安」「怖い」と言いますが、それは当たり前のことです。不安に思ったり、自信がなかったりというのは、ただ経験していないだけで、経験を積んでいけばその不安もなくなり、自信にも繋がっていきます。だからビビっている状態は、チャレンジしようと思っているからです。自分自身もビビっている時は、「これは挑戦しようと思っているから素晴らしいことなのだ。エキサイティング!」と思って取り組みます。スタッフに対しても、あなたは素晴らしいと声をかけます。

私は、狩猟免許を取得していたこともあります。農作物がイノシシ被害で大変なことになっていると聞き、知りたいと思いセミナーに参加したことがきっかけです。そこから免許取得までに至ります。命を頂くという大切な心も養います。そういえば魚釣りを始めたのも、自分で捕った魚を頂くと思い立ったことからでした。思い立ってすぐに釣具屋さんに行きました。
看護の仕事以外でも、自分が社会貢献できることは何か、たくさん感じたいといろいろと興味を持っています。
私の習慣ですが、今日1日を終える時に「私が気付かなかったところで、私を助けてくれた人がいたでしょう。その人のおかげで今日を終えることができました。ありがとう。」と感謝の言葉を心の中でつぶやきます。

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