石川県立看護大学 先生へのインタビュー

石川県立看護大学の先生にインタビューしてきました!
大学のいいところや学生の雰囲気などを紹介してくださいました。

【取材協力】 ※2017年12月取材
・川島先生…教授。老年看護学や認知症高齢者ケア論の授業を担当。また、講義の他に学生の実習に同行。
・大江先生…助教。精神看護学の授業を担当。

石川県立看護大学のいいところ

川島先生

本学は2000年に開学した単科大学で、看護職を目指す人にとっては看護漬けになれる学校です。そして、全員が看護師と保健師の2つの国家試験受験資格が得られる、石川県内で唯一の大学です。

また、看護師は専門職ではありますが、これからの看護師は一般教養や知識も豊かであってほしいと考えているので、一般教養科目にも力を入れています。患者さんとそのご家族は様々な人生を歩まれ、いろいろな方がいらっしゃいます。看護の知識が乏しいことで、患者さんの気持ちや身体のケアに追いつかないということがあってはいけませんので、一般教養も重視しております。

その他、開学以来特に力を入れてきたのが地域の人々の当たり前の暮らしが分かる看護師を育てることです。地域で暮らす人々が病気になったり怪我をしたりすること、出産などの嬉しいこと、老いて最期の日を迎えることなど、看護師は人の生老病死に出会います。そこで、その方たちがどのようなところで生活してきたかを理解するため、1年生は病院や現場にいきなり行くのではなく、地域住民の普段の暮らしを目の当たりに出来るようなプログラムにしています。本学では「地域で始まり地域で終わる」という人間の生活スタイルをイメージできるように、力を付けていってほしいと考えています。

1年生の「フィールド実習」は特徴的な授業で、かほく市や遠くは能登町などへお邪魔して、普通のお宅へ民泊させていただきます。一緒にご飯を作って食べたり、農作業を手伝ったり、グラウンドゴルフをしたり、小学校に行って健康教育をしたりという内容です。その他にも、住民の健康調査や子どもへのインタビューなどの活動を成果報告会で発表します。4年生がプレゼンテーションを上手にできるのは、やはり1年生の時から小さな発表を重ねているからだと思います。

大学は能登地方の入口にありますので、能登方面の方々には沢山のご支援いただいています。私たちも中能登、奥能登からご要望があれば一緒に研修会をするなど、積極的に行っていきたいと考えています。その背景には、能登半島地震の経験があります。その時に死者や不明者が少なかったのは、やはり地域住民同士の繋がりの強さが大きかったかなと思っています。行政の保健師さんをはじめ地域住民の方々が、誰がどこに住んでいるということを知っていたから、その結果に繋がったのではないか、という風に分析されています。

大江先生

本学は地域との繋がりが強く、能登の奥の方までカバーしており、いろいろなイベントを行っています。特にかほく市とは包括的連携協定を結んでいます。つい先日もイオンモールでウォーキングのイベントがありました。地域で暮らしている方とどう関わっていくかを学ぶことは、大学のポイントであり、本学のいいところです。
私の専門は精神看護学です。精神科と聞くと、恐らくうつ病や統合失調症などを一番にイメージする方が多いと思うのですが、精神科の領域には自閉症や発達障害などもあり、小中高校とのつながりもあります。地域には精神疾患を抱えている方も沢山いらっしゃるので、ドクターや心理士さんだけではなく、これからは看護師の視点で精神科を学んで、地域に還元していくことが大事かなと思います。

また、単科大学で人数が少ないので、教員と学生の距離が近いです。教員のところに学生が質問に来たり、ふらっと遊びにきたりしています。また、看護以外の教員も、看護との結びつきを意識して講義や演習を展開して下さるので、学生にとっては大きなメリットであると個人的に思います。担当の違う教員同士がコラボレーションすることもあります。1年次のフィールド実習では、領域関係なくいろんな先生方が担当します。私は以前、人間工学の先生と一緒にフィールド実習を担当したのですが、その時に車椅子バスケットを学生と一緒に見に行ったり、そのプレーヤーをお呼びして校内を回ってみたりしました。その時に看護の視点と人間工学の視点とは違っていたので、学生にとって学びが大きかったのではないかなと思います。

そして、本学には大学院があります。学部を卒業してすぐに大学院に入る学生もいれば、一旦就職してから入学する方もいます。ひとつ進んだ研究をすることで学びが深まるという点では、本学に大学院があることもいいところの一つだと思います。

学生の雰囲気について

川島先生

学生は大変素直です。学生は二十歳前後ですから、私の世代では想像もつかないような悩みをかかえているのかもしれません。SNSで対話する時代なので、対面で話すことが苦手な人が少なくないんだろうなと思いますが、なるべく私の方からフランクに話しかけるようにしています。大事にしているのは、どの学生にも必ず挨拶をすることです。挨拶をし続けることで、学生が看護職に就いた時に、自ら患者さんや住民の方たちに挨拶をしてくれるといいなと思います。
また、挨拶をすることが目的ではなく、挨拶することで良い関係が築けたり、患者さんに元気を差し上げられたり、相談してみたいなと思っていただけるような、きっかけになるのではないかと考えています。

大江先生

月並みな言い方ですが(笑)、みんな明るいです。また、人数が少ないので学生同士の仲がいいと思います。看護師に求められる能力という意味もあると思うのですが、協同する、助け合う、高めあうというところに関しては、本学の学生は前向きに明るくやれているという風に思います。そういうところがよく見られるのが実習中です。実習中は記録を書くために睡眠時間があまりとれなかったり、患者さんと関わるというプレッシャーがあったりと、学生は不安定になる時期です。そんな時に教員が声掛けをしてサポートするよりも、学生同士でご飯を食べ、一緒に頑張ろうと励まし合うことが、実習継続やモチベーションに繋がると思います。

また、男子学生と男性教員の会として「男塾」というものがあります。一学年80名の中で平均5名ほどしか男子学生がいないので、やはり男子学生ならではの悩みというものがあります。それを男塾の中でワイワイガヤガヤしながら、「こんな時どうでした?」ということを、学生は先輩や教員に聞いています。そういう面でも学生と教員の距離が近いです。

授業を通して伝えていること・伝えたいこと

川島先生

私は、人間の病気は暮らしの中で作られるので、健康を左右するのは毎日の暮らしではないかなと考えています。そのことを教えてくれたのは、看護の創始者であるフローレンス・ナイチンゲールです。ナイチンゲールは日々の暮らしの中で病気が作られ、また回復が進むというように「病気は回復過程である」と述べています。やはり、ひとりひとりの健康な暮らしの中にこそ、その人が良くなっていく鍵があるのではないかと、学生たちに伝えています。現代でも通用するナイチンゲールからの学びを伝えていきたいなと考えています。学生たちは私のことを「看護大のナイチンゲール」と言ってくれます。無理に言わせているのかもしれませんが(笑)。私は素晴らしいナイチンゲールには到底及ばないのですが、いつか学生が困った時にナイチンゲールの言葉に立ち返れるといいなと思い、教えています。

私は老年看護学の授業を担当しています。今は超高齢社会なので、重要視されている科目の一つであると思います。そこで、高齢者のことをちゃんと理解し、健康な高齢者から終末期の方までの幅広い健康問題に対応していけるような授業をしたいなと心掛けております。二十歳前後の学生にとって、高齢者は自分の祖父母のイメージとしてあるかもしれませんが、触れ合う機会もかつてより減っている可能性があるので、わからないことも多いと思います。そこで、学生がお年寄りに近づく努力をする、そんな授業を心がけています。

大江先生

私は精神科の担当ということもあり、一番は「患者さんの気持ちを知ろう」ということを伝えています。精神障害を持つ方は、思いをなかなか伝えられない方が多いので、言葉ではこう言っていても実は違う風に思っていたり、何も言っていなくても思いは沢山あったり、ということがあります。恐らく一般科でも、病を抱えている方は、何かしら思いを持っていらっしゃるので、患者さんは「どういうことを思っているんだろう」「自分に今何を言いたいのだろう」ということを、いろんな情報から感じとっていく、想像していくことを、学生には気を付けるように伝えています。自分が同じ立場だったらどうかな、どんな風に辛いかなという点に敏感になるようにという話をよくしています。共感性ということが大事だと思います。

また、遥か昔の看護は感覚でやっている部分が多かったのですが、今は科学的な根拠を基に、知識と技術が確立されてきています。学生は沢山のことを4年間で学ばなければいけない点は大変ですが、根拠に基づいた知識と技術を身に着けることで、安全な看護やケアを提供できることを伝えています。そして、講義や実習の中でも、自分の病院勤務の経験を話します。学生は教員が話した現場の話が良かったという感想を書いてくれたりするので、臨床での経験や先輩ナースから学んだことなど、なるべくいろんな話をするようにしています。教科書の話を読むよりも、実際の体験談を話す方が、学生にとってもスッと頭に入ってくるようです。

その他の声

学んだらすぐ明日から実践できるというような、即実践力を追求する教育は、なかなか本物ではないと思っています。やはり自分で考え育てていく力を高めることが大事なのではないかと思います。そう思うと、勉強や教育の成果が出るのは5年後10年後、もしかしたらもっと先なのかもしれません。昨今は即実践力が求められますが、もう少し人の成長を長い目で見守れる社会であったらいいなと思う所もあります。(川島先生)

 

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